アウトドアコーヒーは電気でもっと広がる?
この記事ではアウトドアでポータブル電源を使って湯沸かしを行う際に、どのような製品なら可能で、どのような場面で役に立つのか?という実用性に焦点を当てた解説をしています。
当店では実際にその方法を用いた営業も行っており、その長年の経験を元にお伝えする内容となっています。
※商品の宣伝やレビュー記事ではありません。
昔から定番のアウトドアで大きな電力を得る方法は、主に自動車用の12V大型鉛バッテリーと100V インバーターの組み合わせです。
このような電源システムを利用するには、業者に依頼する場合を除いて基本的には自分で専用部品ごとに購入して組み立てる必要がありました。
今でも、組み立て式には費用を安く抑えたり状況に合わせてカスタマイズ出来たりといったメリットがありますが、電気関係の知識と取り扱いに当たっての注意が必要になることや、気軽に持ち運べるものでもないためにアウトドアコーヒー用途としてオススメ出来るものではありませんでした。
しかし、ここ数年のうちにオールインワンタイプのポータブル電源が手に入りやすくなったおかげでかつての状況からは一変しており、ご興味を持たれる方が増えています。
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ポータブル電源とモバイルバッテリーの違いって?
言葉の意味でも基本構造でもほとんど同じと思えますが、一般的には「電源」か「電池」かという言葉の違いが家庭用100V電圧が出力出来るかどうかという区別を表しているように思います。
ここでもそれに倣って、日本の家庭用定格電圧100V対応のインバーターを搭載したオールインワンタイプを「ポーターブル電源」とし、スマホ・タブレット用のような低電圧USB出力タイプを「モバイルバッテリー」と大まかに使い分けることとします。
モバイルバッテリーは湯沸かしで求められるような短時間に大きな電力を生み出す仕様。湯沸かし大きな電力を必要とするの実用性はほとんどないと言って差し支えないと思いますので、主な解説内容からは除外させてもらいます。
オールインワンタイプのポータブル電源の基本構成
ポータブル電源 = バッテリー(組電池)+ 100Vインバーター(電圧変換器)+ 各種入出力装置
- 高容量(貯めておける電力量が多い)
- 高出力(消費電力が大きい機器が使える)
- リチウム系をはじめとする高性能バッテリー搭載
家庭用100V機器の中で消費電力が大きいという場合は、およそ1000w程度を指します。
代表的なものはエアコン、炊飯器、電子レンジ、ヒーター、ドライヤー、コーヒーメーカー、100vタイプのIHコンロなどで、この記事での焦点となる「電気ポット・ケトル」を含みます。
2022年現在では、片手で軽々と持ち運べるほどの重さとサイズでありながら、コーヒー数人分の湯沸かしであれば十分可能な製品も登場しています。
今後のさらなる発展と普及に伴いロケーションや使用器具の選択肢がさらに広がって行くことは確実となっています。
そこで、外や自然の中でコーヒーを楽しむことがより気軽で日常的なものになることを願って、ご購入やご使用に当たって大事なポイントをお伝えして行きたいと思います。
メリット
温度調整や保温機能がある電気湯沸かし器やウォーマーを使うことで、全体の温度管理がしやすくなること。
特に魔法瓶機能など高い保温性を備えたタイプのケトルやポットを用いることによって生まれる「作りたい時にすぐ作れる快適さ」というメリットは、アウトドアにおいて想像以上のありがたみを感じさせてくれるものと思います。
アウトドアは当然ながら心地よく過ごしやすい環境ばかりではありません。
暑さ寒さ、雨風といった天候によっては火起こしやガス器具類の使用はおろか、その場に滞在することすら厳しいという場面が訪れることも頻繁にあります。
そこまでひどい状況を持ち出すまでもなく、ちょっと環境や準備が整っていないだけでも次のような事態にいともたやすく陥ってしまいます。
- なかなか火が付かない・湯が沸かない
- 何もかもが濡れてしまう・冷めてしまう
- 材料・器具類の置き場や扱いに苦労する
- 段取りや抽出レシピにまで注意を払う余裕がない
- 人数分を賄うために何度も作業を繰り返さないといけない
このような経験については、アウトドア派に限らず誰もがどこかしらで身に覚えのある事ではないでしょうか?
せっかくのコーヒーも味気ないものとなってしまいかねない事態ですが、それをアウトドアの楽しみの一つと受け入れられる方ばかりでもないと思います。
これらをスマートに回避するための対策として「電化」はかなり有効と言えます。
それは、「好きな時に好きな場所でコーヒーを楽しむ」という理想?に近づくための手段の一つであることは間違いありません。
もし、さらに手間いらずにしたいという場合には、電気式コーヒメーカーや電動ミルを使うことも出来るようになります。
また、このメリットはコーヒーに限らず屋外調理の全てに渡ることで、快適性と安全性が向上します。
安全性については、ガス器具や火起こし場の準備と清掃、煙、引火や火傷といった手間や危険を回避出来ることが、火を扱う場合と比べてのメリットに当たると思います。
手回しミルを電動化出来る?
小型のバッテリーを内蔵した「ポータブル電動ミル」は、最近(2022年時点)いくつか商品化されて来ています。
ミルの軸をモーターやプーリーで回転させるものが電動ミルなので、手動であってもその部分を後付けで賄ってやるという仕組みがあれば良い訳です。
例えば、電動ドライバーを用いる方法は昔から知られていました。それぞれの手動ミルの軸に合うビットを装着するだけで簡単に電動化出来することが出来ます。
ただし、手動のメリットの一つは低速回転で摩擦によって豆に加わるダメージを抑えることなので、低速回転かつ高トルクで十分な粉砕パワーを持つ高性能モーターを内蔵するタイプがより適しています。
あとは、豆の投入口を何かでカバーしておかないと、回転の勢いで豆をまき散らしてしまう恐れがあります。
というふうに、当店でもいくつか電動化してみた経験がありますが、いろいろ遊びながらミルの勉強も出来るので、メカ好きの方ならやってみるのも楽しいと思います。
デメリット
費用+労力=コストが高くつくこと
熱源としてガス器具類と比べた場合のポータブル電源は、価格が下がって来た現状であってもコストパフォーマンスが良い器具とはとても言えません。
アウトドアコーヒーで快適に使用されたい場合は、上記のような100V1000Wクラスへの対応が明記されているような高容量・高出力タイプを選ぶ必要がありますが、それらの多くは最低でも5万~10万円台となっています。
そして、調理用途の電気機器には以下のような避けられないデメリットがあります。
- 小型化、軽量化が難しい
- 汎用性が低い(用途が限られていて使い回しが利かない)
- 衝撃や環境条件によるダメージを受けやすく、壊れたらその場では直せない
このような、荷物としてまあまあ厄介なものが追加されるということになります。
アウトドア用のガス製品と比べてみましょう。
- コーヒー器具とコンロセットまでをバッグ1つに収められるほどコンパクトになる
バッテリーとガスボンベを同じ体積、もしくは重量で比較した場合のエネルギー密度が大きく異なることが根本的な理由なので代替が困難
- 基本的に壊れにくく作られている
- ~千円で購入出来るものが多く、ガスボンベ(1本~百円、最大火力でおよそ1時間)のコストを含めて運用機会に対するコスパが高い
- 対応する器具に差し替えることで、様々な調理や暖房、照明などにも使える
アウトドア用品として、この差は現在もなお大きいと思います。
アウトドアレジャーにもいろいろあるので、目的に合わせてどちらかを選択したり、併用したりといった運用方法について事前に検討されることをおすすめします。
※近年のポータブル電源にはリチウムイオン電池が内蔵されているものが大半ですが、国際・国内の運輸関連法規において危険物に該当するものです。
数や重さ、場所、安全対策によって使用・運搬・保管可能かどうかといった制限がありますので、状況によっては使用場所の管理者に持ち込み可能か確認するようにしましょう。
※ガソリンやガスを燃料とする発電機は火気に当たる消防法上での危険物です。また騒音・排気が迷惑になるのでキャンプ場や人が多い場所では禁止ということが多いです。
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モバイルバッテリーでも100V出せるけど?
2022年後期にはモバイルバッテリーの高性能化に伴い、100V 出力を備えた製品が登場して来ています。
それは、インバーターやコンバーターの主要部品であるパワー半導体素材にブレイクスルーがあったためで、今後はよりコンパクトで高入出力可能な製品が出て来ると予想されます。
ただし、電圧が100Vになったからと言って、それらで湯沸かしなども可能になったという訳ではなく、ノートPCをターゲットとした100V・AC・数十W クラス向けとなっています。
サイズなりの電力容量と電流の許容範囲という制限は、別々の難題として残ったままで、特にバッテリー体積当たりの電力密度について劇的な進歩が訪れるのはまだ先になりそうな情勢です。
少しだけ、低電圧タイプの保温・湯沸かしの実用性について解説しておきます。
かなり以前から、USB(5V・DC)接続を用いた保温・湯沸かし用マグ・ボトルといったものは製品化されています。
また、低電圧タイプの製品としては車載用シガーソケット接続(12V /24V・DC・300Wほど)を用いた湯沸かしマグ・ポットといったものもあります。
しかし、それらの製品は例えカップ一杯(150ml)の水量であっても沸騰させるまでの熱量を短時間(数分)で発生させることは物理的に出来ない仕様となっているため、待ち時間を気にしないでいられる場面での使用が前提となります。
例えば、オフィスで仕事中にちょっと飲み物を保温しておきたいとかが広告のイメージに挙げられたりしますが、真空断熱ボトル・カップで機能的に十分だと思います。
あるいは、長時間の運転中にインスタントコーヒーやカップラーメンをいつでも作れるようにといったレアケースであれば有用だったのかもしれません。
ここで想定しているようなアウトドアレジャー環境でも、ポータブル電源が登場する前ならば、最小限の電化を目指すような場面で使われて来たのかもしれません。
ご選択やご使用にあたってのポイント
重さと大きさ
「ポータブル(携行可能)」と言っても、湯沸かしまでが可能な1000w出力を持つタイプは、最低でもだいたい「30㎝×3~、重量15㎏~」ほどのサイズ感になります。
ネット販売の紹介ページには、おそらくあえてこの情報をはっきり記載しないケースが多く見られますのでご注意下さい。
頻繁に持ち歩きながら使うようなものではなく、車の荷台や大きめのキャンプセット、野外イベント、防災設備などにおいて長時間固定の場所に設置して利用することが前提になると思います。
運搬や設営にかかる労力と使用機器類も含めたスペースを確保する、といった心構えのようなものが必要と思います。
実働時間
使用環境次第で大きく変わります。
おおまかには機器の仕様に表記されている値から計算出来ます。
「電源の容量(wh)×60」÷「使用機器の定格消費電力(w)」=「使用可能時間(分)」
W=VA 1h=60m=360s
100V×10A=1000W
※製品によって単位表記が異なることもあります。
これはあくまで理論上の最大値なので、加えて主に影響するバッテリー性能として低温への耐性、出力維持性能、さらに各機器の保護機能の設定値などを考慮する必要があり、それらによってケースバイケースで実働時間には大きな開きが生まれます。
理論値通りということはまずなく経年劣化も起こりますので、1~2割少なめと見積もっておいた方が無難だと思います。
上に挙げたようなタイプの1000w対応クラスで標準的な製品であれば、最低でも「水温15度から3リットル(コーヒー20杯分ほど)の水を30分かけて1回は沸かす」ことくらいは出来ると思いますが、それを何度も出来ると言えるほどではありません。
この例は、電力容量1000whのポータブル電源に消費電力1000wの電気ポットを接続して30分使うことを想定したものですが、この場合、およそ半分の電力を使ったという計算になります。
ケトル・ポット以外の電気機器を使ったり、電力の変換ロスなどを考慮すれば、理論上は半分残っているとしても実際に同じことを2回行う余裕はないと言えます。
動作音
大きな電力を入出力する際には熱の発生が伴います。
その熱による損傷を防ぐために、充放電部には空冷ファンが内蔵されています。
高出力時や急速充電時のブーンという風切り音については、結構大きいなと感じられる方が多いと思います。
静かな状況で使用することを想定されている方は、以下のような対応が必要になるかもしれません。
- 静粛性を考慮された商品を選ぶ
- 使用機器の消費電力を抑える
- 置き場所を離す
- 排熱を考慮しつつ防音する
充電とソーラーパネルの実用性について
忘れてならないのが充電に掛かる時間ですが、付属の充電器や100vコンセントにつないだ場合で電欠状態から満充電までは数時間以上は掛かる充電能力のものが一般的です。
また、このタイプの製品にはオプションとしてソーラーパネルによる充電機能を持つものも多いようですが、それが何を表しているかというと、実働時間についてイメージと実性能の間にはギャップがあることをメーカー側も十分に承知している証左と言えます。
そこで、持ち運べる程度のサイズで現行型ソーラーパネルの生み出せる電力について考えることになりますが、その電力変換効率と天候や設置場所によって大きく変化する稼働率を合わせてどの程度の数値が期待出来るかを知る必要があります。
もし、購入前にその値を知っていれば、これはあくまで低消費電力機器向けや長期運用向けの補助機能であり、短時間のレジャー向けではないという判断になるのではと思います。
「オフグリッド環境で独立電源設備を構築する」ということはアウトドア愛好家にとって憧れの一つかと思いますが、ロマンだけではなくコストパフォーマンスも追い求めるなら、オールインワンタイプを選択する理由はほとんど見当たりません。
ポータブル電源専用のソーラーパネルについて最も有効と考えられる使用用途は連泊以上を想定したキャンピングカーでの運用です。
そもそも車内という条件であればオルターネーターからの充電が最適にはなりますが、車の屋根を利用したソーラー充電であれば停車アイドリング中のエンジン騒音や排気、ガソリン消費を抑えることが出来るので役立つ場面も大いにあるのではと思います。
災害発生時などの停電対策用途についてですが、その必要性はそれぞれの方が電力危機に遭遇する頻度と規模をどの程度と見積もるかによるので、個人的には余裕があるなら持っているに越したことはないとしか言えません。
正極材
「リチウムイオン電池」というカテゴリーの中にも材質やメーカーによって性能や価格が異なる様々な製品があります。
価格と性能のバランスから最もお手頃で、実際に幅広い製品に使用されている正極材はリン酸鉄(LifePO4)系です。
中身の素材と体積が同じなら電池としての基本的なスペックもだいたい同じになります。
様々な販売店や製造元がありますが、電池自体を作っている工場は同じというケースも多いです。
それらをアレンジする段階を経て最終製品にも様々なバリエーションが生まれることになります。
よくあるトラブルと対策
消費電力オーバーによる不具合
消費電力が大きい機器はまともに使えない、すぐに壊れてしまうということもよく聞く話です。
電源を構成するバッテリーやインバーター、接続ケーブルなどの許容電力に対して、使用したい機器側の要求する電力が大き過ぎることが主な原因です。
一昔前に多かったのは、某国の製品設計や製造工程に問題があるケースでしたが、それは徐々に減って来ているようです。
その他の原因の一つには、使用機器側の仕様に示されている「最大消費電力」と「定格消費電力」の意味の紛らわしさもあるかと思います。
電気機器では「最大~」という一瞬とか短時間、主に動作開始時に流れる電力と、「定格~」という常にとか長時間流れる電力があることで区別が設けられています。
それと知らずに定格だけを見て「ギリギリだけど大丈夫」と思っていたら、実は「最大」の方では範囲を超えていたという、許容範囲についての誤解を生みやすいポイントになっています。
ほとんどの電源側機器には、それらも見込んだ許容範囲や自動的にいくつかの安全装置が働く機構が設けられていますが、一瞬の過負荷でヒューズが飛ぶ、高負荷時に発生する熱による内部機器の損傷を防止するために強制停止するといった、復旧のための措置や待ち時間が必要になることがあります。
何らかの不良や故障によって、最悪の場合には発火という事態も起こり得ることは頭に入れておくべきと思います。
このような不具合を未然に防ぐための対策には以下のようなものがあります。
- 電源側、使用側それぞれの最大・定格消費電力を確認する
- 許容範囲内でも出来るだけ低消費電力の機器を選択する
- 同時に多数の機器を使用しない
- バッテリー残量が少ない状態で無理に使用しない
使用感が落ちるデメリットは大きいですが、安全性や信頼性が高まるメリットも大きいと思います。
実働時間が足りない
ご自宅と同じような感覚で使ってみたら「予想以上に早く使えなくなってしまった」ということは、やはり起こりやすいです。
一般的なご家庭で消費される1日分の電力は5~10KWくらいなので、これを現状のバッテリーで賄おうと思うと、もはやポータブル(携行可能)と呼べる範囲なのかを疑うサイズと重さになって来ます。
使用前、購入前に電気機器を動かせる時間を予測するには、知識やある程度の慣れが必要です。上記【実働時間】項の計算式をご参考に、電源側の性能と使用機器ごとの消費電力を調べてからご使用になることをおすすめします。
実は、現在民生化されている程度の容量や出力を持つリチウムイオンバッテリーは、産業向けには10年、20年といったスパンで以前から実用化されていたものです。
それでも、このような問題がなかなか解決しない理由は「電池」そのものの開発の困難さにまつわる基礎科学の発展が、一朝一夕では起こりえないことを表しています。
普及が進んでいなかった時期、このような用途で民生品の中から選択出来るものは「ディープサイクルバッテリー」という鉛蓄電池の高性能版しかありませんでした。
鉛を使っているので非常に重く、あらゆる性能で物足りず苦労した経験を思い返せば、リチウム製品がサイズや重さ、安全性、価格といった点で扱いやすくなり普及段階に入って来ただけでも素晴らしいことと感じます。
コーヒーに関することだけではなく、アウトドアでの様々な活動を便利にしてくれるものであることは間違いありません。
トラブルを避けるためには、何をどれくらい使いたいのかという使用目的を明確にした上で、それに余裕を持って対応可能な製品を選ぶようにしましょう。
※内蔵されている安全装置については、強固なものから最低限のものまで様々です。価格にはこういった表記外の性能やサポート・保証内容も反映されている場合があることをご承知おき頂くと良いかと思います。
国内製品や販売者であれば法律で定められた明示すべき仕様や検査済みマーク(PSEなど)が記されているはずです。ネットショップなどで見かけるちょっと怪しい製品には肝心な部分が表記されてない、もしくは正確でないものも多々ありますのでご注意ください。
当店の取り組み
当店では開店当初(2010年)から、ブース内で電気機器を使用するための独立電源システムを構築し「アウトドアで提供するコーヒーとそこから得られる体験のクオリティーを向上させる取り組み」を行ってきたことから、このようなご質問を頂くことも多いです。
素材の持つエネルギーを有効活用
当店が出店する地域では、安全や設備上の制限によって火気使用不可・発電機使用不可・外部電源引き込み不可という条件の会場が少なくないです。
商売として、そのような場所で調理に欠くことの出来ない湯沸かしや冷蔵を長時間行い続けられるか?なおかつ利益を得られるか?と考えた時、誰の目にもそのハードルは非常に高いと映るため、それを主なエネルギー源として野外会場でコーヒー店の営業を行っている前例は見当たらない状況でした。
そのため、独自に蓄電池の利用方法の習得やそれに伴うソーラーパネル・熱電発電機などを取り入れた省電力化などの様々な試みや工夫を積み重ねて、いかに少ないコスト(費用や労力)から効率的で安全な運用を可能にするかを探って来ました。
アウトドアではインフラが途絶(オフグリッド)している中、気温40℃から氷点下までになる時期があり、時には豪雨、暴風にさらされたりすることもあります。
人にとって快適な環境ばかりでないことが自然なことであり、それにどのように対応し活動を可能にするか学ぶこともまた自然なことだと思います。
厳しい環境に置かれたとしても「少しでも快適においしくコーヒーを味わってもらうためにはどうしたら良いのか?」を追い求めた結果として、電気エネルギーを有効な手段の一つとして活用しています。
なぜ野外でわざわざそのようなことを行うのか?と思われる方も多いと思いますが、その理由は、どこでも自然と共にコーヒーを楽しむことが当店を形作る土台にあり、その探究自体も大事な楽しみの一つだからです。
このようなことはおよそコーヒー、ましてお客様のご興味とは関係ない知見やノウハウかもしれませんが、目の前で様々な素材、道具、技術とそのエネルギーを活用することで生まれて来る一杯は、ただカップを差し出されるだけでは味わえない体験を伝えてくれるのではと考えています。
※現在は、出店時に自然エネルギー発電を行うのに割く時間と労力が足りないため休止しています。また実際の社会に当てはめるには、電力需要を満たすだけの供給力とコスト(費用と労力の負担)といった観点も必要です。
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