抽出中の水と粉(粒子)が混ざった状態から粉を濾過して取り除くこと
これは当然ですが、粉が混ざっていると飲みにくくておいしく感じられないからです。
ただ、フィルターの性質によっては粉だけではなく、粉から溶け出した成分のうちで大きめの分子までが濾過される場合があります。
そのことがコーヒーの風味に与える効果を知ると、お好みによって使い分けることが出来るようになります。
また器具としての使い勝手が大きく違うことも、ご選択に当たっての理由になると思いますので、それらも含めて代表的なものについてご紹介します。
フィルターの仕様による性質と効果
メッシュ
個々の穴(通り道)の平均的なサイズ
多くのフィルターは繊維状の材料を絡ませることで出来ているため、サイズにはバラツキがあります。
風味に与える効果として最も大きい要因です。
厚み
繊維で出来たフィルターの場合はその層が折り重なる量のことで、穴(通り道)の距離を表します。厚みが大きくなるほど、通り道は長く曲がりくねったものになって行きます。
成分や粒子が吸着される量と通り抜けやすさに影響します。
金属製についても、例えば2~枚重ねやステンレスたわしのような形状とすることによって、層を形成するものであれば効果が生まれると考えられます。
コーヒーフィルターの最も大事な性質は「水・成分・粉それぞれの粒子の通り抜けやすさ」です。基本的に水と成分は通り抜けて粉は通り抜けないくらいの仕様になっています。
水の粒子(分子)サイズは非常に小さいので大抵のメッシュは通り抜けます。しかし「成分・粉の粒子」は大きさが大きく異なるものが含まれていますので、通り抜けられるものと通り抜けられないものが出て来ます。
上記二つの仕様によって、風味に違いが現れる理由をまとめると以下のような関係になります。
粒子サイズ
水(極小) < 成分の大半(小)< コーヒーオイル(やや大)≦ 微粉(やや大) < 粉(大)
1.濾過する速さが変わること
抽出に掛かる【時間】が変化するということなので、成分が水に溶け出す量が変わります
【メッシュ:細 → 時間:長 → 濃いめ】
【メッシュ:粗 → 時間:短 → 軽め】
【厚み:厚 → 時間:長 → 濃いめ】
【厚み:薄 → 時間:短 → 軽め】
2.メッシュサイズと同じくらいの成分や粉については、仕様の微妙な違いで濾過される量が変わる
- 微粉:粉の細胞壁(繊維質)が目に見えないほどまで細かく砕けたりはがれたりしたもの
【微粉量:少 → 軽め(クリーン)】
【微粉量:多 → 濃いめ(ざらつき)】
- コーヒーオイル:生豆が元々持っている油脂分
※鎖状に連なった分子構造を持ち分子量・サイズとも大きいことから高分子と呼ばれる
【オイル量:少 → 軽め(キレ・さっぱり)】
【オイル量:多 → 濃いめ(コク・まろやか・しっかり)】
フィルターが風味に与える効果を【】でお示しした4つの特徴としてまとめることが出来ます。
仕様はメーカーや商品ごとに異なりますので、どのようなものがお好みに合うかを判断する材料としてもらえたらと思います。
また、エスプレッソ、エアロプレスといった器具を用いるなどで抽出条件【圧力】が大きく変化する場合は、同じ仕様であっても「通り抜けやすさ」は大きく変わることにご注意下さい。
種類別の特徴
ペーパー
木材や植物の繊維で作られた紙
材質:パルプ製が多い(主成分はセルロース)
- 【メッシュ:細 → 時間:長 → 濃いめ】
- 【厚み:薄 → 時間:短 → 軽め】
- 【微粉量:少 → 軽め(クリーン)】
- 【オイル量:少 → 軽め(キレ・さっぱり)】
価格が安く、ゴミ捨てや保管などの扱いも楽なことからも日本では最も一般的。
「漂白タイプ(白い方)」の方が紙臭さ(原因はセルロースやリグニン)が出ないものが多いのでおススメです。最近の物は酸素漂白されているので体にも環境にも無害です。
「無漂白タイプ(未晒し)」に多く見られる紙臭さを緩和するための対策が以下の手法です。
リンス:ドリップ前にフィルターに湯通しして洗っておくこと
紙臭さのない漂白タイプであれば、風味に対して与える影響はありません。
※当店では事前に湯通しするのでご質問頂くことが多いですが、目的は他にあります。フィルター位置のズレ防止と器具類の予熱で、これはポイント調整の数値に明確に現れるほど風味に影響を与えます。その理由においては湯通しをおススメします
ネル
植物の繊維で作られた布。語源は英語のフランネル
材質:綿(コットン)製のものが多い
- 【メッシュ:粗 → 時間:短 → 軽め】
- 【厚み:厚 → 時間:長 → 濃いめ】
- 【微粉量:少 → 軽め(クリーン)】
- 【オイル量:多 → 濃いめ(コク・まろやか・しっかり)】
コーヒーオイルが若干通り抜けやすくなることで濃いめ、特にコクや香りが増える傾向があります。
メッシュは粗目ですが、厚めの繊維層や起毛部分が微粉を吸着するように作られているため口当たりはクリーン。
水洗い(煮沸)することで再利用可能。使用回数が多くなると洗い切れない微粉による目詰まりが発生するので交換が必要になります。
抽出ごとに洗浄や繊維に残った成分の腐敗を抑えるための冷蔵保管が必要といった点で多くの手間が掛かるデメリットがあります。
※風味としては最もおススメです。当店では独自に調整したものを作ってもらっています。(コロナ禍のためペーパーに変更中)
金属
材質:ステンレス製が多い
フィルター仕様による効果については、様々なタイプが存在しているため一概には言えません。
- 2重メッシュなどで異なるサイズが用いられているもの
- エスプレッソ用では元々かなり細いもの
- メッシュの数が異なるetc
以下は一例として、プアオーバー型の製品やフレンチプレスに使用されることが多いものについての特徴を上げています。
- 【メッシュ:粗 → 時間:短 → 軽め】
- 【厚み:薄 → 時間:短 → 軽め】
- 【微粉量:多 → 濃いめ(ざらつき)】
- 【オイル量:多 → 濃いめ(コク・まろやか・しっかり)】
微粉が若干通り抜けてしまうメッシュを持つタイプが多く、厚みによる吸着も起きないため刺激的な風味(濃い薄いとは異なる)や口当たり、舌触りのざらつきが現れやすいです。
コーヒーオイルが通り抜けやすくなることで濃いめ、特にコクや香りが増える傾向があります。
水洗いすれば再利用可能。ドリッパー一体型が多く、その場合は器具類を減らせます。
長期使用で目詰まりが発生することがありますが、煮沸洗浄することで緩和出来ます。
不織布
繊維をランダムに絡ませてシート状にしたもの
材質:コーヒー用としてはポリプロピレン・ポリエチレンなどの化学繊維が多い
- 【メッシュ:細 → 時間:長 → 濃いめ】
- 【厚み:薄 → 時間:短 → 軽め】
- 【微粉量:少 → 軽め(クリーン)】
- 【オイル量:中 → ほどほど】
- 形状:箱型が多い → 低面積が大きく流出速度が速い → 軽め
ドリップバッグのフィルターに使われることが多い。
その場合の構造は透過式ですが、箱型という形状と粉量の少なさから風味が軽めに仕上がる傾向にあるため、あえてカップの中で浸漬状態とすることで濃度調整する方式が多い。
近年はそのデメリットを改善した上置き型や円錐型なども出て来ているが、使い勝手の面や価格がさらに割高といった理由から目にする機会は少ない。
熱圧着出来るなどの加工性や強度にも優れ、無味無臭。ドリップバッグに使われているものの中には、大きさの異なるメッシュ加工を施すことでコーヒーオイルを通り抜けやすくしているものもある。
そのようなコーヒー専用タイプは風味の点でかなり優秀と思います。
※当店のドリップバッグではこのタイプの上置き型を採用(手製作する時間がないため販売休止中)
高性能ながら、基本的に使い捨てで割高感が強いことや、化学繊維製であることもペーパーの代替とはなりにくい理由かもしれません。