Soma Coffee Kyoto – 杣珈琲 京都 –
  • Home
  • About
  • Q&A
  • Schedule
  • Contact
  • Online Shop
2022年8月25日 投稿者: somacoffeekyoto
Q&A, ホームコーヒーについて, 未分類

濃度がブレない抽出レシピの作り方② -TDS濃度・収率を把握する-

濃度がブレない抽出レシピの作り方② -TDS濃度・収率を把握する-
2022年8月25日 投稿者: somacoffeekyoto
Q&A, ホームコーヒーについて, 未分類

Index

  • 1 抽出についての客観性を高めるには?
    • 1.1 問題1:注水の規則性(パターン)が曖昧
    • 1.2 対処法1:基準注水パターンを設ける
      • 1.2.1 お湯は何回に分けて注いだらいいの?
    • 1.3 問題2:基本ポイントと濃度の関係性が曖昧
    • 1.4 対処法2:TDS濃度と収率を計測・計算する
      • 1.4.1 「~飲み比べ」や「~検証」の信ぴょう性って?
    • 1.5 解決はなく対処方法は模索段階
      • 1.5.1 粉量:お湯の量の比率だけじゃダメなの?

抽出についての客観性を高めるには?

工程表をpdfファイルで開く・ダウンロードする

上手にドリップするには? – 基本編 – の工程表で挙げている1杯分の抽出例を基準にして、抽出条件と濃度の関係を具体的に探ってみます。

当店では抽出に関わるポイントをまとめて「抽出条件」と表し、以下のように分類することで整理しています。そして、これらに具体的な値を入れて目的のコーヒーへのガイドラインとしたものを「抽出レシピ」と表しています。

また「ポイント=要因」という意味で使っています。正確な英訳ではファクター(factor)に当たりますが、その方が耳馴染みが良いというだけの理由です。

抽出条件一覧

カテゴリー1:材料ポイント【生豆・焙煎度・挽き目・鮮度】

カテゴリー2:工程ポイント【分量・時間・温度・圧力】

カテゴリー3:環境ポイント【設備・器具類】

カテゴリー4:風味ポイント【濃度・収率・官能評価】

基準レシピ

  1. 【生豆:グアテマラ 焙煎度:6(シティー) 挽き目:5(中挽き) 鮮度:焙煎後数日以内】
  2. 【粉量:12g  抽出量:150g  時間:蒸らし30秒 + 1分30秒 湯温90℃ スラリー温度85℃】 
  3. 【設備:室内 気温:25℃・器具類:HARIO V60 樹脂製 専用ペーパーフィルター】

※スラリーとは固体と液体の混合物を指し、ここではドリッパー内で粉と水が混ざった状態のものを指す

まずは【分量】と【時間】が変化した場合の濃度変化を検証するためのレシピとして、この1杯分の基準レシピを元にその2杯分のコーヒーを作りたい場合に粉量を2倍(24g)、抽出量も同じ比率で2倍(300g)にした場合を比較してみます。

【分量(粉量・抽出量)】を増やすことによって自ずと抽出時間は長く掛かるようになるものですが、比較を分かりやすくするために時間も2倍(3分)掛かった場合としておきます。

このように条件を整理し数値として可視化することで、透過式で起こりやすい分量変化に伴う時間変化の過程では一体どういうことが起きていて、どういう結果につながるのかに焦点を当てることが出来るようになります。

また、以下の検証において【温度】が除外されている理由は、抽出に関わる温度要因を出来るだけ一定に保つ操作をすることで、検討内容に影響を与えないようにしているためです。

ここからの回答は、抽出にまつわる多くの疑問についても整理しながら進めて行きます。

問題1:注水の規則性(パターン)が曖昧

基準レシピに比べて粉量2倍レシピの抽出条件【時間】が長くなった原因は、増やした分の抽出量に対して時間当たりの注水量(注水速度)が少なかったということは明らかです。

しかし、いつどのくらいの量をどのくらいの速さで注いでそうなったのか?ということは上の抽出レシピだけでは分かりません。

ハンドドリップであれば、開始から終了まで一定に水を注ぎ続けるコーヒーマシーンのようなパターンとは異なり、ほとんどのケースで蒸らし、1投目、2投目~、注水量、時間などをなんらかの形で調整しようとするでしょう。

様々な形状をした、お気に入りのドリップポットやドリッパーを使って。

では、あえてそのような不統一で不規則な変化を与えることの基準や目安になっているものは何でしょうか?

円を描いたり雫のように落としたりする注ぎ方や水の勢い、どれかの重さ、どれかの時間、粉と水の浸り具合、流れ落ちる速さ、挽き目、膨らみ具合、あるいは経験やなんとなくなど…。

目に見える違いはいろいろありますが、これらのうちのどれが正解、あるいは普段意識されていることでしょうか?

実は、これらは全てが成分の溶解量に関わる要因です。さらにそれらは粉の状態や器具類によっても影響されてそれぞれの値や見た目も変化します。

つまり、「どれかだけ」を見ていても同じ抽出工程は再現出来ないという複雑さに、混乱を生み出している問題の核心が現れます。

デメリット:正確な濃度調整を行うことが困難

抽出条件と注水パターンによって粉と水の接触機会が不規則に変化するので、それぞれの抽出ごとに成分溶解量の変動が起こりやすい

透過式のデメリットを拡大させる要因となっているのは、まさにハンドドリップがその代表と言えますが、注水工程が漠然とし過ぎていることです。

よって、注水方法についての詳細を明確にすることが求められます。

対処法1:基準注水パターンを設ける

以下はその一例で、当店の基準レシピにおいて用いているものです。

工程2の注水1投目は「蒸らし」という準備段階として以降の注水とは区別して考えます。

・注水量は粉量の1.5~2倍 注水開始から30秒間

※粉の吸水力を活かし粒子内部まで浸透させる。注水の基本は粉全体に偏りなく行き渡ることなので、足りないより多少サーバーに落ちる程度が良い。

蒸らし注水量に当たる分量は最終的に粉に吸水されたままになるので、抽出量には含まれないものとして差し引いて計算する。※③記事で後述

1投目では粉や器具類と水温の差が大きい場合が多いため、ドリッパー内のスラリーがレシピ温度に全く到達しないという失敗が起こりやすい。

器具類の予熱や蒸らし時のみ水温を数度高めに調整するといった対策によって回避する。

工程3~5の2投目以降では、出来るだけ注水パターンを変えないようにします。

言葉で言うのは簡単ですが、実際にハンドドリップでそれを成立させるためには多くの注意点があります。

注水工程を安定させるためには、基本ポイントを細分化した以下の要因についても調整する必要が出て来ます。

【分量:粉量・微粉量・蒸らし注水量・各投注水量・抽出量】

【時間:蒸らし時間・各投注水時間・各投時間・待機時間・注水速度・流出速度】

以下に挙げる注意点の目的は「抽出ムラ」と呼ばれる粉と水の接触機会の部分的な偏りを防止して再現性の高い注水パターンを得ることにあります。

お好みや抽出条件に合わせて特定の風味傾向に導くことを目的とするものではありません。

  • 注水口の高さ:粉上面から数センチメートルの範囲内を保つ

※水勢による加圧を出来るだけ防止する。

計測不可能なため、対流による撹拌、スピン、ステアなどは用いない。

ドリッパー内の水の重さが増減すると下部に向けて掛かる水圧が増減します。注水量に伴う流出速度の増減が起こるということですが、その変動パターンを出来るだけ一定に保つようにする。

  • 注水範囲:粉上面を平らに保ちながら偏りなく注ぎ、粉の層全体に行き渡らせる

チャネリングを防止するため、意図的に中心部分だけ窪ませる(外周部にあえて土手を設ける)ことで成分溶解量をコントロールする手法は用いない。

チャネリング:水が粉の層を透過する際の流路が一部に偏ること

⇒結果として収率が落ちるため、スッキリとした味わいを生む効果のある手法として利用される場合があります。

  • 注水速度:時間当たりの注水量を一定に保つ
  • 1投時間:注水開始からドリッパー内の水がほぼ落ち切るまでとする

※1投の終わりを何を持って判断するかは難しい所です。ここではドリッパーから落ちる抽出液が雫状になった時点とします。

  • 1投注水量:1投注水量の範囲は最低でも粉全体が浸る状態から蒸らしで膨らんだ上部ライン辺りまで。
  • ペース:注水を複数回に配分する場合については注水速度に従って1投注水量に達した時点で止める。

抽出液がドリッパーから落ち切ったら、待機時間なしで次の注水を開始するという流れを繰り変えす。

  • 注水速度・1投時間・1投注水量は設定した条件によるので、その具体的な値については③記事で後述する注水パターンの導出方法によって求める

※注水パターンの数値化および可視化については、流出速度測定に対応したコーヒースケールの利用がお勧めです。

関連記事:上手にドリップするには? – 応用編【圧力】が「おいしい淹れ方」の鍵 –

お湯は何回に分けて注いだらいいの?

注水を分割する数(投入回数)についての決まりというものは特にありません。

一般的には、一投目で蒸らしを行ったあと2~4回程度に分けるとされていることが多いと思いますが、それは現代的な風味の嗜好や器具に合わせた場合はそれくらいがいろいろとちょうどいいからで、長い歴史で培われた数ということになると思います。

では、その増減とは一体何を意味するのかというと、粉と水の間に「浸透と拡散」という圧力の一種がどれくらいの強さと時間