アウトドアコーヒーは電気でもっと広がる?
この記事では、アウトドアでポータブル電源を使って湯沸かしを行う際、どのような製品なら可能で、どのような場面で役に立つのか?という実用性に焦点を当てた解説をしています。
当店はアウトドアコーヒーの専門店として、湯沸かし用途をはじめとする電気機器を独立電源システムで運用することを開業(2010年)の時点から計画に織り込んでおり、これまでの営業において長年に渡って実践して来た経験を元にお伝えする内容となっています。
※個別の商品に関する宣伝やレビュー記事ではありません
組み立て式からオールインワンの時代
アウトドア(電源インフラのないオフグリッド環境)で大きな電力を得る方法として昔からの定番は、主に自動車や工業機械に多く使われているような電力容量の大きい12V ・24V鉛バッテリー と100V昇圧器(インバーター)の組み合わせです。
通常、このような電源システムを利用するためには、専門業者さんや詳しい方に依頼するか、もしくは自分で部品を購入するかしてシステムを組み上げて行く作業が必要になります。
組み立て式には、「費用を安く抑えることが出来る」「状況に合わせてカスタマイズ出来る」といったメリットがあります。
しかし、当然ながら取り扱いに当たって電気関係の知識と作業場の危険に対する注意も必要なこと、楽に持ち運べるサイズでも重さでもないことから、「気軽にアウトドアコーヒーを楽しむ」といった目的に対して誰にでもおすすめ出来る方法ではありませんでした。
ところが、ここ数年のうちにオールインワンタイプの手軽でコンパクトなポータブル電源が手に入りやすくなってきたことで状況は一変し、アウトドアレジャーでの利便性向上や防災用途にも有効なアイテムとして関心度と需要が一気に高まりました。
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手回しミルを電動化出来る?
電池性能の向上に伴って、家電業界では様々な製品を小型化、ポータブル(運搬可能)化して行くという一大潮流が生まれています。
コーヒー器具にもその波は波及しており、小型バッテリーとモーター内蔵の「ポータブル電動ミル」というカテゴリーの製品が、最近(2022年時点)いくつか登場して来ています。
ミルの歯を支えている軸をモーター(ギア・プーリーなど含む)で回転させるものが電動ミルなので、もともとは手回し用であっても、その部分だけを後付けで賄ってやれば良い訳です。
例えば、その動力として電動ドライバーを用いる方法があり、普段から工具類を扱う人の間では昔から知られていました。
それぞれのミルによって軸頭の形状が異なりはしますが、それに合うビット(アダプタ)を探して装着することさえ出来れば、いともたやすく電動化することが出来ます。
ただし、手動のメリットの一つは強い摩擦によって豆に加わる過度なダメージや粒度のバラつきを抑えられることなので、低速回転ながらも高トルクを生み出すことで、浅煎りの硬い豆に対しても十分な粉砕パワーを発揮出来る高性能モーターが内蔵されたタイプがより適しているのは確かです。
※モーターが弱いと実際に止まったり、基盤が焼き付いたりします
あとは、豆の投入口を何かでカバーしておかないと、回転の勢いで豆をまき散らしてしまう恐れがあります。
といった具合で、当店でも過去にいくつか電動化してみた経験がありますが、いろいろ遊びながらミルの勉強も出来るのでメカ好きの方にはおすすめの楽しみ方です。
ポータブル電源とモバイルバッテリーの違いって?
言葉の意味や電気機器としての構造もほとんど同じもののように思えますが、一般的には「電源(パワーサプライ)」と「電池(バッテリー)」という言葉の違いによって、「100V機器が使えるかどうか?」という区別を表しているように思います。
ここでもそれに倣って、次のように使い分けることにします。
- ポータブル電源
日本の一般向け電気の定格「AC(交流)100V」入出力対応のオールインワンタイプ
※電気の規格は用途や各国の制度などによって異なります
- モバイルバッテリー
スマホやタブレットなどの低電力機器向けオールインワンタイプ
※例:世界的な共通規格のUSB形式は、だいたいDC(直流)5V
主な仕様と用途で区別した場合、モバイルバッテリーに分類される製品は、湯沸かしをはじめとする調理、暖房といった用途で求められる比較的大きめの電力と熱を即座に供給する能力は持っていないことが明らかなので、ここでの解説内容からは除外させてもらいます。
ポータブル電源の簡単な構成と用語
ポータブル電源 = バッテリー(組電池)+ BMS(制御装置) + 各種入出力(昇圧降圧)装置
- 容量(バッテリーに貯めておける電力の量)
- 入出力電圧と電流(連続して出し入れ出来る電力の大きさ)
- バッテリーの電極材(リチウム系が高性能材料の代表格)
この三つの項目に注目すると、電源としての大まかな性能を知ることが出来ます。
バッテリーの性能が上がって来たことで消費電力が大きい家電類も普通に使えるようになって来た、という現在の状況は、電圧100V 電流10Aを流し続けることで1秒ごとに1000Wほどの電力を消費する機器であっても長時間安定して使えるようになって来た、ということを意味しています。
主なものとしてはエアコン、ドライヤー、炊飯器、電子レンジ、IHコンロなどがあり、この記事で焦点となる電気ポット・ケトルもその中に含まれます。
2022年現在では、片手で軽々と持ち運べるほどの重さとサイズでありながら、消費電力1000Wクラスのポットでコーヒー数人分の湯沸かしくらいは十分に可能な製品も登場しています。
今後のさらなる発展と普及に伴い、ロケーションや使用器具の選択肢が広がって行くことは確実と言えます。
そこで、外や自然の中でコーヒーを楽しむことがより気軽で日常的なものになることを願って、ご購入やご使用に当たって大事なポイントをについて解説して行きたいと思います。
モバイルバッテリーでも100V出せるけど?
2022年後期には、上記モバイルバッテリーの高性能化に伴い、100V 出力を備えた製品までもが登場して来ています。
それは、インバーターやコンバーターの主要部品である「パワー半導体素材(GaN、SiCなど)」にブレイクスルーがあったためで、今後は、よりコンパクトながらも高入出力・低損失(熱の発生が少ない)を可能とする製品が開発されることも予想されます。
ただし、電圧が100Vになったからと言って、それだけで湯沸かしなども可能になるという訳ではなく、主にノートPCのような小型製品をターゲットとした仕様(100V・AC・数十W クラス)となっています。
サイズなりの電力容量と電流・熱の許容範囲という制限は、別々の難題として残ったままであり、特に容量を決めるバッテリー体積当たりの電力密度に劇的な進歩が訪れるのは、まだ先になりそうな情勢です。
少しだけ、低電圧タイプの保温・湯沸かしの実用性について解説しておきます。
かなり以前から、USB(DC5V)接続を用いた保温用マグ・ボトル・ウォーマーといったものは製品化されています。
また、もう少し電力の大きなものとしては車載用シガーソケット接続(DC12V /24V・300Wほど)を用いた湯沸かしボトル・ポットといったものもあります。
それらの製品が持つ仕様においては、例えカップ一杯の水量であっても水温を25℃(常温)から100℃(沸点)に到達させるために必要な熱を短時間(数分ほど)で発生させることは不可能という物理的な仕組みを理解しているならば、「活用範囲が待ち時間を気にしなくていい場面に限られている」という結論に至るはずです。
例えば、オフィスで仕事中にちょっと飲み物を保温しておきたいとかが広告のイメージに挙げられたりしますが、真空断熱ボトル・カップでも保温目的だけなら個人的には十分と思います。
もしくは、長時間の運転中に温かい飲み物やカップラーメンをいつでも作れるように、といったケースであれば現在も役立つ場面があるかもしれません。
ここで想定しているようなアウトドアレジャー環境でも、最小限の電化を目指すようなニッチな需要に対して活用機会が見出される余地もあるのではないかと思います。
メリット
温度調整や保温機能がある電気湯沸かし器やウォーマーを使うことで、調理工程全体を通しての温度管理がしやすくなること。
特に魔法瓶機能などを持つ高い保温性を備えたタイプのケトルやポットを用いることによって生まれる「作りたい時にすぐ作れる快適さ」というメリットは、屋外での活動において想像以上のありがたみを感じさせてくれるのではないかと思います。
アウトドアは当然ながら心地よく過ごしやすい環境ばかりではありません。
暑さ寒さ、雨風といった天候によっては火起こしやガス器具類の使用はおろか、その場に滞在することすら厳しいという場面が訪れることも頻繁にあります。
そこまでひどい状況を持ち出すまでもなく、ちょっと環境や準備が整っていないだけでも次のような事態にいともたやすく陥ってしまいます。
- なかなか火が付かない・湯が沸かない
- 何もかもが濡れてしまう・冷めてしまう
- 材料・器具類の置き場や扱いに苦労する
- 段取りや抽出レシピにまで注意を払う余裕がない
- 人数分を賄うために何度も作業を繰り返さないといけない
このような経験については、アウトドア派に限らず誰もがどこかしらで身に覚えのある事ではないでしょうか?
せっかくのコーヒーも味気ないものとなってしまいかねない事態ですが、それもアウトドアの楽しみの一つだろうと受け入れられる方やシチュエーションばかりでもないことは、皆さんがご想像の通りです。
そんな事態をスマートに回避するための対策として、「電化」は非常に有効です。
もし、もっと手間いらずでという場合には、電動ミルはもちろんのこと、電気式コーヒメーカーさえ使うことが出来るようになります。
それは、「好きな時に好きな場所でコーヒーを楽しむという理想(?)」に近づくための手段の一つであることは間違いありません。
こうしたメリットはコーヒー作りに限った話ではなく、屋外調理の全てに渡って快適性と安全性を向上させるものです。
ガスや薪・炭を燃料として火を扱う場合と比べ、場所の確保、準備と清掃、煙、引火や火傷といった手間や危険のもろもろをまとめて回避出来ることが特に大きなメリットに当たると思います。
デメリット
費用 + 労力 = コストが割高になること
ガスやガソリン、石油といった炭化水素を燃料とする従来のタイプと比べた場合、熱を生み出すためのエネルギー源として電力を用いる時点でコストパフォーマンスが良い方法とはとても言えません。
アウトドアでも家電を快適に使用されたい場合は、最低でも上記のような100V1000Wクラスへの対応が明記されている商品を選ぶ必要があります。
そのクラスの中でもサイズと性能と価格のバランスを備えたものとなると、一昔前より価格は大きく下がっていると言えども、およそ5万~10万円といったところかと思います。
そして、調理用途の電気機器も合わせて準備することになりますが、それらには費用以外にも以下のような避けられないデメリットがあります。
- 消費電力1000Wクラスの機器でも調理用熱源としての火力は不足気味
- 小型化、軽量化が難しい
- 汎用性が低い(用途が限られていて使い回しが利かない)
- 衝撃や環境条件によるダメージを受けやすく、壊れたらその場では直せない
- バッテリーが切れた時に充電出来る設備や環境が少ない上、必ず待ち時間が発生する
これらのデメリットは「荷物としても道具としてもかなり厄介なものを追加している」ということを示しています。
アウトドア用のガス・石油系製品と比べてみましょう。
- 折りたたみやスタックが出来ることで軽量コンパクトな製品が多い。コーヒー抽出に必要な一揃いのセットでも小さなバッグ1つに収められるほど
- 基本的にシンプルな構造で頑丈に作られている
- 器具類を熱源、光源として様々な用途に使える
- 本体と燃料ともに比較的多くの場所で購入出来る上、補充や交換がすぐに出来る
- 価格が安い。主な燃料となるガスボンベ1本~百円で最大火力でおよそ1時間使用可能、年間数十日利用として試算した場合でも運用機会に対しての総合的なコスパが高い
※一般的なバッテリーとガスボンベを同じ体積、もしくは重量で比較した場合のエネルギー密度が大きく異なるという物理的な性質が原因なので、現状での代替は困難
アウトドア用品として、この差は現在もなお大きいと思います。
アウトドアの楽しみ方にもいろいろありますし、器具選び自体もその一つと思います。
実際の場面を想定した上で選択する、あるいは併用するといったように、目的や状況に合わせた器具類の運用方法についても事前に検討されることをおすすめします。
※近年のポータブル電源にはリチウムイオン電池が内蔵されているものが大半ですが、国際・国内の運輸関連法規において危険物に該当するものです。
数や重さ、場所、安全対策によって使用・運搬・保管可能かどうかといった制限がありますので、状況によっては使用場所の管理者に持ち込み可能か確認するようにしましょう。
※ガソリンやガスを燃料として投入された発電機は火気に当たる危険物です。また騒音・排気が迷惑になるのでキャンプ場や人が多い場所では使用禁止というケースもあります。
どうしてわざわざ電気でやるの?
当店が、労力と費用の掛かる電源システムを使ってまで営業を行って来た最大の理由は、出店会場の特殊な条件に対応する必要があったためです。
京都市内で開催される野外イベントは、重要文化財の寺社仏閣の敷地内や歴史的に貴重な場所で行われるものも多く、「火気使用厳禁」「施設の電源は利用不可」「キッチンカーはもちろん車の乗り入れ不可」といったルールが設けられていることも多いです。
おそらく、他の地域では考えられないほどの制約が飲食系出店者に課されることが珍しくないので、そこでコーヒーのお店を(ある程度気ままに)やって行けるかと想像した場合、無謀と判断される方が多いのではと思います。
しかし、あえて厳しい環境に挑戦して来たことが、「どこでも品質の高いコーヒーをご提供するため、お客様の求めるものにお応えするために必要なものは何なのか?」について、答えを探し続ける原動力となりました。
なぜなら、熱源が火器か電気か?といった違いもさることながら、地域やイベントごとに異なるルールといった大きな枠組みから受ける制限こそ、コーヒーやサービスの品質に最も大きな影響を与える要因だからです。
露天営業では、コーヒー豆の種類、抽出器具や技術、見た目などの小さな違いについてうんぬんする以前に、まともに調理が続けられる基本的な設備(電気、ガス、水)が整っていなければ何も始まりません。
つまり、環境の変化に対応出来ない店は、商売としてお客様の相手にされずに淘汰されてしまう、ということです。
なので、変化する環境に対応出来る柔軟な考え方と生存ノウハウが必須になります。
手前味噌ながら、その模索と実践を通して培った人とコーヒーと自然に通じるノウハウこそが、他に類を見ない当店の特徴と外の世界で生き残る力を生み出していると思います。
ポータブル電源や電気自動車といった形で、独立電源システムが軽量安価となり、誰でも扱いやすくなって来たという大きな時代の変化は、当店の特徴の一つが徐々に失われて行くということでもあります。
しかしながら、そもそもコーヒー作りに関して、自然環境やローカルルールへの対応策にまで知見を広げよう、などと思う人はほとんどいません。
アウトドアコーヒーというスタイルがより多くの人々の間に広がって行くには、家庭レベルに近い利便性と快適性が得られる電力が必要ということを誰よりも痛感して来たので、その変化を大いに喜んでいる立場でもあります。
ここでの情報発信は、当店が持つ分野を越えたコーヒー作りのノウハウが、ご興味を持って頂いた方のお役に立てば、という考えの下に行っています。
ご選択やご使用にあたってのポイント
重さと大きさ
「ポータブル(携行可能)」と言っても、湯沸かしまでが可能な1000w出力を持つタイプは、最低でもだいたい「30㎝×3~、重量15㎏~」ほどのサイズ感になります。
広告や紹介ページにサイズや重量の情報をはっきり記載しない、あるいは、そんな風に持ち運ぶ人はおそらくいない、といった形で意図的に誤認を誘発させるようなケースも多く見られます。
おそらく、価格に次いで思案のしどころになる情報なので、十分にご注意下さい。
頻繁に持ち歩きながら使うようなものではなく、車の荷台やそこから近いキャンプサイト、野外イベント、防災設備などにおいて長時間固定の場所に設置して利用することが前提と思います。
周辺機器も含め、運搬や設営にかかる労力と設置スペースを確保する必要があります。
実働時間
使用環境次第で大きく変わります。
おおまかには機器の仕様に表記されている値から計算出来ます。
「使用可能時間(min)」=「電源の容量(Wh )× 60」÷「使用機器の定格消費電力(W/s)」
W=VA (1秒当たりの電力量)
1h(一時間)=60min(分)=3600s(秒)
※製品によって単位表記が異なることもあります。
計算結果はあくまで理論上の最大値であり、実際の実働時間に影響を与える代表的な要因としては、「低温への耐性」「電圧維持特性」、さらに「保護機能の設定値」などをが挙げられます。
それらによってケースバイケースで大きな開きが生まれることがあります。
理論値通りということはまずないことや経年劣化も起こることから、実働時間は常に1~2割少なめに見積もっておいた方が運用上は無難かと思います。
例として、1000Wクラス電源では標準的な容量(1000Wh)の製品で、定格消費電力1000W/sの電気ポットを使用する場合を考えてみます。
3リットル(コーヒー20杯分ほど)の水を水温15℃から100℃まで沸すとすると、およそ30分ほど掛かります。
この作業によって容量の半分の電力を使ったという計算になりますので、あと一回は同じ作業が出来ると思われるかもしれません。
(1000Wh ×60÷1000W/s)-30=30min
実際には、ポット以外の電気機器を使ったり、気温が低かったり、電力や熱のロスがあったり、電圧低下保護機能が働いたりするので、電力の全てが湯沸かしに投入される訳ではありません。
つまり、同じことをもう一度行う余裕はないという結論になります。
動作音
大きな電力を入出力する際には熱の発生が伴います。
その熱によって機器が損傷することを防ぐために、通常は空冷ファンが内蔵されています。
高出力時や急速充電時のブーンという風切り音については、結構大きいなと感じられる方が多いと思います。
静かな状況で使用することを想定されている方は、以下のような対策が必要になるかもしれません。
- 静粛性を考慮された商品を選ぶ
- 使用機器の消費電力を抑える
- 置き場所を離す
- 排熱を考慮しつつ防音する
充電能力とソーラーパネルの実用性
忘れてならないのが「充電に掛かる時間」ですが、付属の充電器で100Vコンセントにつないだ場合でも、電欠状態から満充電までは数時間以上は掛かる充電能力が一般的です。
※「モバイルバッテリーで100V」の項でも触れましたが、2023年現在においてはパワー半導体という大きな電力を入出力するための部品の性能が格段に向上して来たことで、小型製品では難しかったレベルの急速充電に対応したものが登場しつつあります。
また、このタイプの製品にはオプションとしてソーラーパネルからの充電機能を持つものも多いようですが、それが何を表しているかというと、実働時間についてのイメージと実性能の間にはギャップがあることをメーカー側も十分に承知している証左と言えます。
そこで、持ち運べる程度のサイズで現行型ソーラーパネルの生み出せる電力について、どの程度の数値が期待出来るかのかを考えることになりますが、パネルの面積と電力変換効率、天候や設置場所によって大きく変化する稼働率を掛け合わせて見積もる必要があります。
もし、購入前にその値を知っていれば、この機能はあくまで低消費電力機器向けや長期運用向けの補助的なものであり、短時間のレジャー向けではないという判断になるのではと思います。
「オフグリッド環境で独立電源システムを構築すること」はアウトドア愛好家にとっての大きな憧れの一つと思いますが、ロマンだけではなく実用性やコストパフォーマンスも追い求めるなら、オールインワンタイプを選択する理由はほとんど見当たりません。
ポータブル電源専用のソーラーパネルについて最も有効と考えられる使用用途は連泊以上を想定したキャンピングカーでの運用です。
そもそも車内という条件であればオルターネーターからの充電が最適にはなりますが、車の屋根を利用したソーラー充電であれば停車アイドリング中のエンジン騒音や排気、ガソリン消費を抑えることが出来るので役立つ場面も大いにあるのではと思います。
災害発生時などの停電対策用途についてですが、その必要性はそれぞれの方が電力危機に遭遇する頻度と規模をどの程度と見積もるかによるので、個人的には余裕があるなら持っているに越したことはないとしか言えません。
正極材
「リチウムイオンバッテリー」というカテゴリーの中にも、使われている材料や仕組みによって様々な性能や価格の製品があります。
安全性も含めた総合的な性能バランスに優れ、かつ価格もお手頃という理由から、幅広い製品で使用されている正極材がリン酸鉄リチウム(LiFePO4)です。
市販品の場合、材料構成と体積が同じなら電池としての基本的なスペックもだいたい同じになります。
様々な販売店や製造元がありますが、電池自体は同じ工場で作られたものというケースも多いです。
大抵の工業製品に言えることですが、ユーザーインターフェイス(入出力部分やデザイン)の違いを主として、最終製品には様々なバリエーションが生まれることとなります。
よくあるトラブルと対策
消費電力オーバーによる不具合
消費電力が大きい機器はまともに使えない、すぐに壊れてしまうということもよく聞く話です。
電源全体を構成するバッテリーやインバーター/コンバーター、接続ケーブルなどの許容電力に対して、使用したい機器側の要求する電力が大き過ぎることが主な原因です。
一昔前に多かったのは、某国の製品設計や製造工程に問題があるケースでしたが、それは徐々に減って来ているようです。
その他の原因の一つには、使用機器側の仕様に示されている「最大消費電力」と「定格消費電力」の意味の紛らわしさもあるかと思います。
電気機器では「最大~」という一瞬とか短時間、主に動作開始時に流れる電力と、「定格~」という常にとか長時間流れる電力があることで区別が設けられています。
それと知らずに定格だけを見て「ギリギリだけど大丈夫」と思っていたら、実は「最大」の方では範囲を越えていたといったような具合で、許容範囲についての誤解を生みやすいポイントになっています。
ほとんどの電源側機器には、そうした事態も見込んた上での許容範囲といくつかの安全装置が設けられていますが、一瞬の過負荷でヒューズが飛ぶ、高負荷時に発生する熱で機器が高温になると強制停止するといった機構が自動的に働くと、復旧のための措置や待ち時間が必要になることがあります。
何らかの不良や故障による異常から、最悪の場合には発火・爆発というかなり危険な事態も起こり得ることは頭に入れておくべきと思います。
このような不具合を未然に防ぐための対策には以下のようなものがあります。
- 電源側、使用側それぞれの最大・定格消費電力を確認する
- 許容範囲内でも出来るだけ低消費電力の機器を選択する
- 同時に多数の機器を使用しない
- 電気機器にとって過酷な状況や強い衝撃を避ける
使用感が落ちるデメリットはもちろんありますが、安全性や信頼性が高まることのメリットの方がはるかに大きいと思います。
実働時間が足りない
ご自宅と同じような感覚で使ってみたら「予想以上に早く使えなくなってしまった」ということは、やはり起こりやすいです。
一般的なご家庭で消費される1日分の電力は5~10KWくらいなので、これを現状のバッテリー性能で賄おうと思うと、もはやポータブル(携行可能)と呼べる範囲なのかを疑うサイズと重さになって来ます。
使用前、購入前に電気機器を動かせる時間を予測出来るようになるためには、正確な知識とある程度の慣れが必要です。
実は、現在民生化されている程度の性能を持つリチウムイオンバッテリーは、産業向けとしては10年、20年といったスパンの以前から実用化されていたものです。
それでも、こうした問題がなかなか解決に至らない理由として電池開発の困難さがよく挙げられていますが、それにまつわる基礎科学分野の発展が一朝一夕では起こり得ないことを表しています。
普及が進んでいなかった時期、このような用途で民生品の中から選択出来るものは「ディープサイクルバッテリー」という鉛蓄電池の高性能版しかありませんでした。
鉛を使っているので非常に重く、あらゆる性能で物足りず苦労した経験を思い返せば、リチウム製品がサイズや重さ、安全性、価格といった点で扱いやすくなり普及段階に入って来ただけでも素晴らしいことと感じます。
コーヒーに関することだけではなく、アウトドアでの様々な活動を便利にしてくれるものであることは間違いありません。
トラブルを避けるためには、何をどれくらい使いたいのかという使用目的を明確にした上で、それに余裕を持って対応可能な製品を選ぶようにしましょう。
※内蔵されている安全装置については、強固なものから最低限のものまで様々です。価格にはこういった表記外の性能やサポート・保証内容も反映されている場合があることをご承知おき頂くと良いかと思います。
国内の製品や販売者であれば法律で定められた仕様や検査済みマーク(PSEなど)といったものがどこかに明示されているはずです。ネットショップなどで見かけるちょっと怪しい製品や販売元の情報には、肝心な部分の記載がない、もしくは正確でないものも多々ありますのでご注意ください。