当店は固定店舗を持たないアウトドアコーヒー専門店として、10年以上に渡り様々な環境でハンドドリップを行いながら、100万杯を越えるコーヒーをお客様にご提供して来ました。
このQ&Aでは、多くのお客様とのお話させてもらう中で頂くご質問でも、コーヒー抽出に関して特に重要となるポイントについての回答をまとめています。
回答に当たっては、「誰でもどこでもコーヒーを楽しめるように」という当店のコンセプトに沿って、全てのコーヒーに共通する優先度と信頼性が高い知識と技術(ノウハウ)に絞ってお伝えするよう心掛けています。
あくまで当店基準ではありますが、入門的な内容の初級から、プロの仕事においても十分に通用する中級段階までの範囲となっています。
自然科学という理論とアウトドアという実践を両軸として、当店独自の経験と探究を積み重ねる中で導かれた核心的なノウハウ。
その密度の濃いテキスト情報に驚かれることもあるとは思います。
しかし、コーヒーに馴染みのない方がコーヒーを学ぶ場面で最大の壁となっているのは、今や誰でも手に入る素材や器具や知識や技術ではなく、次の障壁です。
コーヒー文化のベースになっている感覚的で抽象的な言葉使いや表現方法
つまり、その世界へ入ろうと思うと、「まずは意思疎通のハードルを越えなくてはならない」ということです。
そのような問題を抱えている場合、見えないノウハウや現象を可視化したり、感覚的な表現を言語化したりすることで、日常とコーヒーの世界をつなぐガイドラインや橋渡しとなる通訳的な情報こそが、コーヒーを学びたい方にとって本来必要とされているもの、ではないかと思います。
ここでは、以下のような対策が施された、どなたでも理解と習得が可能な情報として、コーヒーに関するノウハウをお届けしています。
ただし、当店が営業に当たって実践している方法は、「野外イベントでのコーヒーサービス」という、やや特殊な環境に最適化して来たものであり、究極の~や、最高品質の~をご提供することを目的としたものではありません。
そして、それぞれの個人やお店のコンセプトやスタイルは、コーヒー作りの全体像から見れば、どれもほんの一面に過ぎません。
そんな多様なコーヒーの世界の中でも、当店の大きな特徴と言える要素は、コーヒーや人も含む自然と直接向き合う中で蓄積して来た、多岐に渡るノウハウを細部にまで注ぎ込んで作り上げていることです。
当店Q&Aには、その謎を解き明かすために必要なエッセンス(核心)が詰まっていますので、ご自身の目的地までの最短ルート(シンプルにコーヒーを楽しんでもらう方法)を見付けるヒントとなれば幸いです。
日常的なコーヒーに関する情報の中では、自ずと多数派の視点に偏った内容が支配的になって行くため、あまり日常的とは言えない「自然法則」や「難しそうなもの」については、視界の外に追いやられがちになってしまいます。
ところが、物事の成り立ちや働きが起こる仕組みから遠ざかって行く、という「根拠(源流・ソース)の喪失」こそ、ありとあらゆる場面で私たちを矛盾と混迷の渦(底なし沼)に陥れる原因の一つでもあります。
このような理由から、あえて当店のQ&Aでは源流から無数に枝分かれした個性(豆・焙煎・抽出・器具・お店など)にフォーカスを当てた知識やレビュー、およびハウトゥーを中心とする解説とは一線を画すように配慮しています。
自身の力で目的とするコーヒーに辿り着くためには、どんな場面にも通じる確かなノウハウを身に付ける必要があります。
そのためには、細かい流れを一つ一つ追い掛けて右往左往するという道のりよりも、源流(原理的な仕組み)へ向かってしっかりと足場を固めて行く道のりの方が、結果的には確実でシンプルな選択となるからです。
こうした当店の考え方は、コーヒーだけでなく人々の暮らしを生み出す源流「杣(木々や水、土を育む山々)」に思いを馳せて付けた屋号に至るまで一貫するものです。
現代の日本においては、プロアマ問わず、品質の高いコーヒーを作るために必要な材料・情報・コストについての障壁は、そもそも存在しません。
にもかかわらず、以下のような心理的なイメージや予備知識によって距離を置いてしまわれたり、迷い道や落とし穴からコーヒー沼にハマってしまわれたりするケースは、未だ少なくありません。
近年のコーヒー業界は情報と物流ネットワークの発展によって、まさに当店もそうであるように、趣味の延長からでも気軽に始められるほど参入障壁が低くなっている分野の一つに挙げられます。
歴史的なものも含めたマーケティング・ブランディング戦略によって消費者の間で培われて来たイメージと実際の状況の間には、大きなギャップが生まれてしまっていることも確かなようです。
私たちが日常的に触れられる範囲のコーヒーは、特殊で高度な知識や技術、および感性がないと楽しめないものでは決してありませんし、当店の実感としては、むしろその逆ではないかと思います。
では、それぞれの方が抱く「コーヒーのイメージ」とは、どこからどのようにして生まれたものなのでしょうか?
大なり小なりはあるとしても、その原因には、以下に代表されるような情報伝達に関わる問題が潜んでいます。
その発信源には市場の仕組みが存在し、次々と生み出されては消え続ける混濁した情報の波が、すでに私たちを飲み込んでしまっている状態にあります。
この状態こそが、そうとは気付かぬうちに私達が本来望んでいる道のりを阻む、最も避け難い障壁になっているのではないか?とさえ感じるほどです。
コーヒーの入り口は至る所に見つかる現代、いつの間にか底なし沼に誘い込まれてしまうことのないように、目的地までのガイドラインをお示しする「地図とナビゲーション」としての役割を担うことが、このQ&Aで目指していることです。
皆さんご存じのようにコーヒーには長い歴史があり、豆、器具、工程、お店などのそれぞれに目を向ければ多種多様な楽しみ方があります。
では、そういった中からご自身のお好みのコーヒーにたどり着くためには、誰もが以下のような険しい道を進む必要があるのでしょうか?
実は、これらに掛けるコスト(費用・労力・時間)や心配は必要不可欠というものではありません。
さらに言えば、「ご自身が好きなコーヒーを楽しむ」という目的を達成する場合の効率性という観点だけで見た場合には、むしろ非効率的な選択をしていることになります。
一つ一つのコーヒーやそれに関わる事柄にはそれぞれに貴重な個性がありますが、それらは全く別々のものでもなければ、人や道具やお店といった個々の力だけで作られているものでもありません。
自然環境や地域、時代、文化、学問、テクノロジー、ビジネス、人々とその嗜好などに合わせて、少しづつ確立されて来た大きな土台の上に成り立っているものなので、それらの基本的な仕組みやつながりから紐解いて行けば、ある程度は同じカテゴリーやパターンごとに整理することが出来るからです。
その視点に立つことさえ出来れば、「コーヒー作りのパターンは多くない」という全体像(地図)が見えるようになるので、錯綜し無限に広がっているかのように見える道のり(バラエティに富んだ個々)を前にして、手当たり次第に確かめに行かなくても済むようになります。
これらの核心(原理)とそこに至る近道(法則性・パターン)に当たる情報は、この世界にすでに存在しています。
ただし、コーヒーのことが知りたくて、コーヒーの世界という一部だけを見ていると、それが返って見つかりにくくなってしまうかもしれません。
そこで、コーヒーも自然や私たちの暮らしの一部と捉えてみると、はるかに膨大で深遠な探究とその答えが多くの示唆を与えてくれていることに気が付きます。
お好みのコーヒー(目的地)に辿り着くためには、次の行動を最優先にすることをお勧めします。
なぜなら、生身の私たち一人一人の知識や感覚は常に局所的で不完全なものなので、「木を見て森を見ず」という行き当たりばったりの判断に陥いりやすく、いつどこで道を見失ったとしてもおかしくない状態だからです。
以下のコンテンツは、コーヒーに関する核心的な情報とそれらのつながりにフォーカスしてまとめるようにしています。
まだまだ拙い地図と思いますが、コーヒーをより自由に楽しんでもらうお役に立てば幸いです。