おいしいコーヒーの淹れ方は?応用編② – 圧力の扱いにくさ・濃度・収率・AI

 目次
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    コーヒー抽出:基本と応用

    基本編①と応用編②の要点

    • コーヒー抽出の原理、メカニズム、効果について骨子を提示。

    • 抽出の全体像を理解するための基礎的な情報整理。

    • 抽出過程における【圧力】の役割と重要性を示唆。

    圧力に関する問題点

    • 抽出中の粉に掛かる圧力の計測・数値化の困難性。

      • 複数条件の相互作用によって生まれれる非線形・非平衡な物理現象であり、完全な解析・定式化は困難。

      • 圧力計付きエスプレッソマシンをはじめ、圧力の利用を前提に設計された専用器具以外での正確な圧力把握は困難。

    • 圧力の加減が、」粉の状態、器具との相性といった各ケースで異なる抽出条件により、正反対の効果を生む場合もある。そのため、意図した通りの調整を施すには、抽出全般への深い理解と経験が必要。

    • 水と粉の接触時に働く力やその要因といった関係性について、当店の説明が不十分。

    基本工程における次善の策

    • 一般的なハンドドリップにおいて、圧力(主に攪拌と浸透圧)を生み出す主たる要因は水の流れである。

    • つまり、注水流量・流出流量・注水回数といった「水の流れを表す条件を明確にすること」が、圧力を安定的に制御するためという目的は明示的でなくとも、結果的にその目的を果たす唯一の手段であることに変わりはないということ。

    • それらの条件は比較的容易に測定可能な値で、【分量】【時間】ポイントの子要素として扱うことが出来るため、それらを明確にし、レシピの条件に加えることが、現状の技術で圧力をコントロールするための次善の策となる。

      • 現状は【圧力】を基本ポイントから除外し、応用ポイントとして慎重に扱う必要がある。

    実践における推奨事項

    1. 基本ポイント (分量、時間、温度など) を優先的に理解し、実践する。

    2. 応用ポイント として、【圧力】に関する試行と確認を重ねる。

      • 注湯量・ペースの変化が圧力に及ぼす影響を考察する。

    圧力の扱いに関する注意点

    • 圧力は抽出において複雑な役割を果たす。

    • 安易な圧力調整は、望まない結果を招く可能性がある。

    • 抽出全般への深い理解と経験に基づいた慎重な調整が必要。

    今後の課題

    • 水と粉の接触時に働く力や要因、それらと自然との関係について、より深く解明していく。

    • 圧力を含めた抽出のメカニズムの解明に努める。

    まとめ

    コーヒーの抽出とは、ある【分量】の粉に含まれている水に可溶な成分をコーヒー水溶液中にどれくらい取り出すのかという「濃度調整」です。

    そして、濃度変化に対して原理的に作用するポイントが【温度】【時間】【圧力】で、これらのバランスによって成分溶解量を調整することが抽出の本質的な役割です。

    • 抽出液(コーヒー水溶液)全体中の成分量の割合 ⇒ 濃度(TDS)
    • 粉量と溶け出した成分量の割合 ⇒ 収率

    調整の効果について確かめる方法の一つが、風味傾向をこれらの基準によって数値化することです。

    濃度計(糖度計)で計測した値から収率を計算することが出来ます。時々の官能評価や印象だけに偏らないように客観的な指標を得るための方法として、専門的なところでは数十年も以前からすでに活用されているものです。

    ※このような分析方法は、もともと農作物や水質の検査に関わる分野で長年用いられて来たもので、コーヒーの分野で消費者の間にも広く知られ始めたのはごく最近になります。

    4つのポイントとTDS濃度・収率の関係

    バー全体が粉量100%を表し、が抽出された成分量

    残りの大部分はセルロース(豆の細胞壁を構成する繊維質)

    • 最大収率 30%弱 ※現実的な抽出環境では25%以下
    【温度:高 時間:長 圧力:高】
    • 官能評価において適切な範囲(SCA基準ゴールデンカップ)とされるTDS濃度と収率 1.15~1.35% 18~22%
    • 抽出例 条件:透過式・ペーパー・中深煎り・中粗挽き・10g・抽出量150g
    • 目標値:TDS濃度1.35%・成分量2g・収率20%  
    【温度:90℃ 時間:蒸らし30秒+1分30秒 圧力:蒸らし+注水分割(同量3回)】
    • 低収率 数%~十数%前後
    【温度:低 時間:短 圧力:低】

    ポイント調整と風味の関係

    抽出4つのポイントの加減によって起こる風味傾向の変化を示した簡略図です。各ポイントの組み合わせ方を変えてお好みを探してみましょう。

    関連記事:コーヒー収率計算フォーム – TDS濃度・ブリューレシオ・コントロールチャート

    抽出工程表.pdf

    このような直線的なグラフはあくまで簡略的に概要をお示しするための表現です。

    そこには、【圧力】の非線形な変化が抽出に及ぼす影響までは加味されていないためで、その説明や測定・評価方法が不十分であることの表れとも捉えることが出来ます。

    抽出の原理を踏まえて方式・器具・手法を見渡してみると、それらは4つのポイントのいずれかに特定の傾向を与える役割を持っていること、それを実現するための工夫についても自ずと見えて来るのではと思います

    そして、明確な根拠を持ってご自身のお好みに合う組み合わせを選ぶこと、イメージ通りの調整が出来るようになることで、新たな楽しみが広がって行くのではと思います。

    そこでは、ご自身が持っていたコーヒーやコーヒー作成プロセス、コーヒー店に対する捉え方まで、以前とは違ったものになっているかもしれません。

    その先にあるものとは?

    これまではコーヒー抽出の基礎にある「水と粉の性質」に焦点を合わせて、目に見えるマクロ(巨視的)な部分と見えないミクロ(微視的)な部分の橋渡しと整理を目的にお話してきました。

    それでは、ここから先の話にも少し触れてみたいと思います。

    • どういう成分が私たちが感じているような風味を生み出しているのか?
    • 抽出する成分ごとの比率はどこまで意図的に調整出来るのか?

    実は、これらについてもまだ大まかにしか分かっていません。

    コーヒーの風味を構成する要素は大きく「香り・酸味・苦味・甘味・うま味(油分?)」に分類されます。

    そういった風味の素になる数百から千種類ほどの成分と抽出、そして私たちの感覚との関係がより明らかになって行く中で、新たな知見を基にした生産・加工方法や抽出方法が、今後も続々と生まれて来ることが想定されます。

    コーヒーが私たちの体や心に与えてくれる様々な影響についても、その多くはまだまだ謎めいていますが、新たな研究によって確証に近付いて行くものと思います。

    そして、私たちの暮らしに関わってくる変化としては、AI搭載のロボットが自動で生豆の選択から焙煎、製粉、抽出までこなすようになり、いつでもあなたのその時の気分や体調に合わせたコーヒーを作ってくれるということが当たり前になる、という日が来るもしれません。

    現代の知見と技術の組み合わせを持ってすれば、それはすでに実現可能な領域なので、世界のどこかに無人のロボット販売店が出来ていたとしても、明日の朝ご自宅のキッチンにあったとしても、驚きこそすれ不思議なことは何一つない、という段階に来ています。

    すでに一部の分野では、高度なエンジニアリングとそれを制御するためのAIをいかに使いこなすか?というステージへと人の役割が移行しつつあり、コーヒー分野も望むと望まざるとに関わらず、その流れに合流することになると思います。

    今回の記事で、これらのようなコーヒーの多様な魅力の一端をお伝え出来ていましたら幸いです。

    もしご意見・ご感想や間違いのご指摘などありましたら、ご遠慮なくお知らせください🙏

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