コーヒーの保管方法は? – 鮮度の基準・冷却・油・酸化について –

目次
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    鮮度の基準は焙煎日

    コーヒー抽出液やコーヒー豆・粉も、他の食品と同じように、時間経過に伴って徐々に成分が変化し、風味は劣化して行くものです。

    ただ、コーヒー豆の場合は、以下の理由で風味と鮮度の関係を把握しづらいものにしています。

    • 時間経過による見た目の変化が少ない
    • コーヒー豆の新鮮さという情報に触れる機会が少ない

    コーヒー豆のコーヒーらしい風味の多くは、「焙煎」という工程で、生豆(なままめ・きまめ)に熱を加えて行くことによって生まれます。

    なので、コーヒー豆の新鮮さの起点は、「いつ焙煎されたものなのか?」になります

    しかし、製造年月日が製造物の表示義務から除外され、消費期限あるいは賞味期限となって以降、コーヒー豆が製造された日、すなわち「焙煎日」という情報が分かりづらくなっているのが現状です。

    例えば、大手メーカー製の場合、工場で焙煎され、パッケージングされてから数ヵ月、1年ほどに消費期限が設定されているものが一般的です。

    適切に加熱・密封処理された商品であれば、「品質に問題がない(飲用しても体に害がない)」と言える期限ではありますが…

    「焙煎後の新鮮な状態が十全に保たれているか?」

    と言えば、特に繊細な風味成分に関しての経時変化は避けられません。

    ここでは、コーヒーの鮮度と風味の関係、保管方法の違いによる変化について、詳しく解説して行きます。

    ご興味のある方やお仕事として情報をお探しの方は、次の規約もご参照ください。

    🔗レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約

    密封して冷暗所が基本

    瓶・缶・袋・タッパーなど、形状や扱いやすさは容器によって様々ですが、以下の要素について遮蔽性(しゃへいせい)が高い素材と構造を持つものがおすすめです。

    • 空気(酸素)
    • 水分

    例えば、当店が焙煎豆・粉の販売において使用している保存袋は、何重の対策が施された高い遮蔽性を有しています。

    • ガス抜きバルブ(逆止弁)
    • チャック式
    • 再内壁アルミ蒸着型の多層フィルム仕様

    コーヒー用保存袋のガス抜き機構は何のため?

    焙煎直後の豆を袋に密封した状態で保管すると、豆内部から徐々に吹き出して膨張するガスの圧力で袋もパンパンに膨らんで行きます。

    袋の素材や閉じ口が弱いものだと、破裂したり、開いたりしてしまうこともあります。

    自然なことではあるのですが、見た目から何らかの異常と思われやすい、かさが増す、破損する可能性があるといった点については輸送、品質管理上の問題を引き起こす原因となります。

    それらを未然に防ぐための対策として、外部へガスを放出する逆止弁(バルブ)や特殊なシール機構を備えたコーヒー専用袋が用いられることが多くなっています。

    保管温度と新鮮な期間の目安

    保管する温度が低いほど素材の状態を一定に保つことが出来るので、一般的には、冷凍状態が最も風味を長持ちさせる方法と言えます。

    ただし、肉や野菜のように水分が多く含まれている食品の場合、十分に冷却されるまでに時間が掛かったり、水分が凍結する間に素材の組成を変化させてしまったりすることで、風味の劣化につながることがあります。

    コーヒー豆にはほとんど水分が含まれていないため、ご家庭用の冷凍庫でも十分ですが、業務用ではより早く、より低い温度で冷凍出来る製品を使う場合もあります。

    また、低温状態では香りを含む気体類の豆からの放出も低く抑える(揮発しにくくする)ことが出来ます。

    常温・冷暗所保存の場合(20℃前後)

    • 豆の状態 ⇒ 焙煎日から2~3週間ほど
    • 粉の状態 ⇒ 焙煎日から1~2週間ほど

    冷蔵庫の場合(ご家庭用:5~10℃前後)

    • 豆の状態 ⇒ 焙煎日から2ヵ月ほど
    • 粉の状態 ⇒ 焙煎日から1ヵ月ほど

    冷凍庫の場合(ご家庭用:-18℃前後)

    • 数か月~数年

    ※当店基準で香りや味の劣化が少ないと思われる、およその期間についてお示ししたものです。

    それぞれの期間を過ぎたらおいしくない、飲めないという意味ではありません。

    規模の大きな工場では、窒素をはじめとするガス充填・真空包装などの強固な酸化防止処理が施される場合もあり、そのような製品に関しての期限はこの限りではありませんが、開封した時点からは同様です。

    冷凍・冷蔵庫から出してすぐ使っても良いの?

    冷蔵・冷凍庫から頻繁に出し入れする際は、豆の温度が大きく上下したり、湿気を帯びて結露が起きたりしないようご注意下さい。

    冷蔵・冷凍された豆・粉を使う場合でも、抽出の準備をする間に常温近くまで戻るので、最終的な風味に与える影響はほぼありません。

    ただし、一回の抽出で数十グラム~数百グラムほどの多めの粉量を用いる際は温度差の影響が大きくなる可能性がありますので、しばらく常温環境に置いて待つ、器具の予熱を入念に行うなどの対策をお考え下さい。

    エージング(熟成)による風味変化

    コーヒー焙煎豆の保存中には、わずかづつメイラード反応や酸化、加水分解といった化学反応が進行し、成分が変化することによって風味にも若干の変化が表れます。

    この現象を、「コーヒーのエージング(熟成)」と呼びます。

    例えば、焙煎直後の香ばしさ(苦味・スモーキーさ・ロースト香)やメリハリのあるシャープな味わい(酸味・穀物臭・青臭さ)といったとげとげしさが次第に落ち着き、全体的に一体感を帯びたまろやかさが感じられるようになって行くといった変化が一般的です。

    一般的には、焙煎日から数日~10日程度を好まれる方が多いようです。

    それ以外にも、極浅煎り豆(ライトロースト)、極深煎り豆(フレンチ、イタリアンロースト)の焙煎直後の風味にはより尖った印象が感じられやすいこともあるためか、2週間~1ヵ月ほどの期間が推奨されるケースもあります。

    ただし、それらの一般的なエージング期間には以下の前提があることに注意が必要です。

    • 常温であること
    • 適切な保管状態が保たれていること

    エージングによる風味変化をお求めの場合(特にその再現性までお求めの場合)、「どのような保存環境で、どれくらいの期間にするのか?」という想定をお忘れなく。

    当店では焙煎直後からでも良好な風味をお楽しみ頂けるように、焙煎段階でそれぞれの生豆や焙煎度に合わせた火の通り具合や給排気量の調整を行っています。

    エージングによる風味変化はコーヒー豆の持つ自然な働きによるものであり、楽しみ方の一つと考えていますが…

    上述のように、それぞれの商品やお客様によって風味変化の度合いも保管状態も異なるという状況が容易に想定されます。

    このような状況で、一律のエージング期間を設定しても、皆さんが同様の効果を得られる訳ではなく、数字の一人歩きがかえって混乱を助長しかねないとも考えています。

    鮮度と抽出、風味の関係については以下の関連記事にて詳しく解説していますので、ご興味のある方はご参照ください。

    ※関連記事:コーヒー豆や粉が膨らむのはなぜ?② -エージング・メイラード反応・油と香り-

    消費期限

    法令、製造・販売元ごとの基準や商品によって異なります。

    当店ではコーヒーの風味にとって鮮度も重要な要素と考えているため、密封・冷暗所保管をお願いした上で1ヵ月とコーヒー豆・粉としては比較的短期間に設定させてもらっています。

    基本的には、風味をはじめとする品質についての著しい劣化や健康上の問題を引き起こす怖れのない期間という意味ですので、それを過ぎた場合の補償は出来かねますが、常温冷暗所保管でも2ヵ月ほどは、お召し上がりいただく分においての問題は無いものと考えています。

    豆か粉かで日持ちが変わるのはなぜ?

    豆を挽いて粉にした時点から表面積が増大し、豆の中に蓄えられていて酸素の侵入を防いでいた炭酸ガスなどの気体成分も放出されてしまうことによって急速に劣化が進みます。

    粉のまま野ざらしに近い状態で放置すると、たとえ数十分程度の時間でも揮発や酸化によって美味しさの素になる風味成分が減少して行きます。

    はじめは香り、酸味、甘み、苦みなどの豊富な成分から生まれる風味の多様さや奥行きが失われることで徐々に平坦な味わいとなって行き、油脂分の酸化までが進む段階になると鈍く淀んだ風味やすっぱさ(フルーツ系の爽やかな酸味:クエン酸やリンゴ酸、酒石酸などとは別の過酸化脂質によるもの)が表れて来ることで嫌悪感さえ催すようになります。

    元はどんなに高級、高品質な豆であっても鮮度が落ちて劣化した状態となれば不味くなるものです。

    もし、そのような状態のものと新鮮な普及帯(コモディティークラス)のものを比べたら、普及帯の方がより美味しく感じられた、というケースがあったとしても、日本の食文化においては、大げさに驚いて見せるような場面には当たらないはずです。

    このようなケースは、コーヒーに限らず食べ物に関する日常的な体験からも同じことが言えるのではないかと思います。

    コーヒーは腐敗した成分による食中毒の危険はほぼないとされる食品ですが、人によっては胸やけや胃もたれ、吐き気などといった体調不良を引き起こす事態は十分にあり得ます。

    適切に保管して頂き、出来るだけお早めにお召し上がり頂くことをおすすめ致します。

    ※関連記事:コーヒーミルの重要な仕事 – 挽き目・微粉・粒度分布

    豆に滲む油や液面に浮かぶ油膜は何?

    全てのコーヒー豆には植物性の油脂分が含まれています。

    また、その量には、アラビカ種やロブスタ(カネフォラ)種とを代表とする品種によっても若干の違いがあります。

    そして、焙煎という加熱調理によって脂質(固体)が溶けて油(液体)となって行き、生豆状態では固く閉まっていた細胞壁の繊維質もほぐれて豆が膨らんで行きます。

    すると、油が豆の内側から徐々に表面に滲み出て来るようになります。

    焙煎度が深煎りになるにつれ、豆の膨らみが大きくなって内部の隙間(通り道)も多くなるので、油が滲み出て来る量も多くなります。

    焙煎度で「深煎り」と呼ばれる、繊維質が脆くなって砕ける段階(二ハゼ)を迎えたところから、「フルシティー ⇒ フレンチ ⇒イタリアン」という順に滲み出る油の量が増えて行き、その変化は焙煎中にも目に見えて分かるほどになります。

    焙煎度が「浅煎り」「中煎り」と呼ばれる「ライト ⇒ シナモン ⇒ ミディアム」くらいの範囲では、焙煎後に時間が経ったとしても、そのような変化はほとんど見られません。

    油脂分の腐敗とコーヒーのトラウマの関係

    油脂分はコーヒー生豆に元々含まれており、風味にとっても大事な成分です。

    それが焙煎豆や抽出液の表面に見えるかどうかは、焙煎度や抽出方法によってケースバイケースです。

    つまり、油が滲んでいる・油膜が見える=劣化した状態ではないということです。

    深煎り豆の場合、焙煎直後と比べてどれくらい滲んだ油が増えたかによって、だいたいの経過日数が分かるかも?という程度の指標です。

    油の状態からコーヒー豆の品質について判断するポイントは、「新鮮な植物油の特徴が失われていないか?」です。

    • サラッとした透明感があり、濁ってネバネバした感じがない
    • 焙煎香とフルーツや花の香りが混じった活き活きとした香りが感じられる
    • 香りが弱かったり、鈍く淀んだような匂い(香りではなく)がしたりしない

    油は香気成分が溶け込みやすい香りの貯蔵庫

    油は酸化したり、不純物が溶け込んだりすると、粘度が上がって独特の腐敗臭を発するようになる

    見た目や感触で分かるほどドロドロした感じや、本能的に嫌悪感をもよおす匂いが感じられるようでしたら、召し上がるのは避けた方が良いと思います。

    また、抽出後のコーヒーの液面に油膜が浮いて見えるケースについてですが、かき混ぜた時にサラッと溶けず分離したまま浮いていたり、コーヒーの香りに混じって、すえたような嫌な匂いを感じたりしないか、という点に注意してみましょう。

    ※近年は生豆の精製段階で発酵を強く促す方式を用いることで豆の個性を際立たせたものが増えており、元々の商品の特徴として発酵臭が感じられるタイプもあります。

    予備知識がないと発酵臭と腐敗臭との区別が難しい場合もあるかと思いますので、違和感を感じたら購入店に直接尋ねてみるのが良いと思います。

    発酵を伴う精製方法を表す代表的な名称:ハニー・ナチュラル・ファーメンテッド・アナエロビック・カーボニックマセレーションなど

    ※ウォッシュド(水洗式)以外はほぼ全て

    コーヒーの腐敗は、油脂が酸化した状態である過酸化脂質の増加が原因の一つです。

    過酸化脂質は体に悪く、摂取量や体調、体質によっては胸やけ・胃もたれ・下痢などの症状を引き起こす場合があります。

    残念ながら、このような状態となったものも含めて、低品質なコーヒーを原因とする辛い体験が記憶に刻まれ、後々まで拒否反応を示すようになってしまった、という方は少なからずいらっしゃいます。

    以下の基準をご参考に、出来るだけ鮮度に配慮された商品を選択してもらうことで、新たなコーヒー体験を味わってもらえればと思います。

    • 焙煎日が明記されている
    • 消費期限まで猶予がある
    • 密閉性・遮光性・遮熱性の高いパッケージが使用されている
    • 冷暗所で保管されている
    • 挽き立て・淹れ立てである

    ※関連記事:コーヒー豆・粉の選び方は?

    抽出後のコーヒー液の保管と温め直し

    コーヒーは抽出液となってすぐの状態から劣化が進行し始めます

    特にホットの場合、コーヒー自身の熱によって酸化、加水分解をはじめとする成分の化学反応や揮発が進行しやすい状態なので、秒単位で劣化していることになります。

    だからと言って、お店でもない限りは自然に冷めて行く数分程度の時間を気にする必要まではないと思います。

    気にし過ぎるのも精神衛生上良いとは言えませんが、逆に気にしなさ過ぎて、次のような保温方法を用いることも良いとは言えません。

    • ウォーマーなどを使って高温状態を長時間に渡って維持する
    • コンロやレンジを使って、ぶくぶく煮立つほど再加熱する

    断熱性が高く密閉出来るボトルやサーバーを使う方法は数時間ほどの保温については有効ですが、熱や金属との反応による成分の劣化はどうしても避けられません。

    ※2024追記:京セラから「CERAMUG(セラマグ)」という製品が発売されています。

    真空断熱ボトルの内側に特殊なセラミック塗装が施されおり、コーヒー液の保管用途を想定した上で、飲み物の成分(酸やアルカリ性物質)とステンレスなどの金属イオンが反応して起こる風味変化がかなり抑えらるようになっている、というものです。

    電気ポットなどには内壁にコーティングを施したタイプはすでにありますが、飲料持ち運び用のマグボトルにこそ求められていたアプローチの実践と高い技術力、実体験としての確かな効果に感動して店主も愛用しているので、ここでおすすめさせてもらいます。

    ※他製品との比較において、保温力は高い方ではないこと、成分(特に油脂分)が壁面のセラミック塗料に吸着されて残りやすいため、念入りに洗浄する必要があることをお伝えしておきます。

    数時間、数日単位での保管をお考えの際は、抽出後に出来るだけ早く冷却する、つまり、アイスコーヒーにしてしまうことで劣化を抑える、という方法がおすすめです。

    それを密封容器に入れて冷蔵庫で保管しておくことで、容器を頻繁に出し入れしたり、開閉したりしなければ、1週間ほどは良好な範囲の風味を保てます。

    実はコーヒー抽出液でも、良好な保管状態を維持することで熟成(エージング)作用が働き、まろやかさや深みのある味わいに変化する、ということが起こります。

    温めなおしの際は、小鍋で弱火にかける、電子レンジの弱モード(牛乳用、あるいは300W 以下)を使うといった方法で、ゆっくり全体の温度を上げる(60℃~70℃目安)ようにしてもらうと、そのような繊細な風味も損なわれにくくなります。

    ※関連記事:【2023再編版】急冷式アイスコーヒーの作り方は?①-氷量問題の解決編

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