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2021年5月2日 投稿者: somacoffeekyoto
Q&A, ホームコーヒーについて

コーヒー豆や粉が膨らむのはなぜ?-焙煎からエージングまで-

コーヒー豆や粉が膨らむのはなぜ?-焙煎からエージングまで-
2021年5月2日 投稿者: somacoffeekyoto
Q&A, ホームコーヒーについて

Index

  • 1 膨らむのが自然なこと
    • 1.1 膨らみが大きくなるポイント
  • 2 焙煎すればコーヒーが見えて来る
    • 2.1 【鮮度】と【焙煎度】を表す目安
    • 2.2 「膨らみ」は魅力的な諸刃の剣
  • 3 その先にあるエージング(熟成)

膨らむのが自然なこと

当店ではお客様の目の前でドリップしています。

コーヒー粉にお湯を注ぐと次第に大きく膨らんで来る様子(コーヒードーム)をご覧になって「うちではこんなに膨らまない」「注ぎ方が上手だから」と思われる方もいらっしゃいますが…

これは決してドリップする人のテクニックやコーヒー豆が特別なものだからではありません。

その理由はコーヒー粉が新鮮だからです。

お湯の注ぎ方やドリッパーの形状、湯温の違いが膨らみ具合に影響することも確かですが、そういった見た目の違いを比べるよりもまずは「どうして新鮮だと膨らむのか、何をもって新鮮というのか」という本質的な問題解決への近道を知りしましょう。

そうすれば、以下のような陥りやすい迷い道からも簡単に抜け出すことが出来ます。

  1. うちでは膨らまななくておいしく出来ないのは自分のドリップが下手だから
  2. 良く膨らむほどレアで高級な豆だから風味も良い

これらの誤解は、過去から現在もなお、ご家庭でのドリップにおいて最も多く見受けられる障壁となっています。

この問題は過去のコーヒービジネスが引き起こしてきた弊害という側面が強いです。

どういうことかと言うと、商品の「新鮮さという高品質」と「低コスト(費用と労力)」は両立しないというというビジネスには常に立ちはだかる障壁そのものです。

誰もが鮮度の高いコーヒー粉を入手するということが難しかった時代が長く続いていたことが、1.2のようなイメージが蔓延することになった原因です。

しかし現在では、技術・物流・通信の進歩によって両立までの障壁が比較的低くなって来ていますので、あとは問題解決への近道さえ見つかれば「コーヒードームと香りが大きく広がるドリップ」まで、どなたでもすぐに辿り着くことが出来ます。

膨らみが大きくなるポイント

注いだ水分が粉に浸透するにつれ、生豆を焼く【焙煎】で生成された「炭酸ガスや香りの元になる気体成分(主に二酸化炭素)」が吹き出して、粉全体が持ち上げられて来ることがコーヒードームの正体です。

その際、粉の繊維質が柔らかくなることで粒子自体も若干膨らみます。

1.焙煎されてから新鮮

豆の状態でおよそ2週間くらいまで

保管状態にもよりますが、パッケージを開封してからの時間ではないことにご注意下さい

2.豆を挽いてから新鮮

ドリップ直前に挽くことで最大化します

粉で野ざらしの状態になると数十分まで

3.粉の挽き目が細かい

個々の粒子が小さく軽いため

4.焙煎度が深め

粒子の密度が低い(脆く軽い)ため、また、それに伴い保持しているガス量が多くなるため膨らみやすくなります。逆に浅煎り粉の粒子は密度が高い(硬く重い)ので膨らみにくくなります

5.水の温度が高め

水温が高いほど細胞壁の内側まで浸透しやすくなるので、放出されるガスや成分の量は多くなります。その場合抽出液は濃いめの傾向になります

これらのことから、膨らみ具合は主にコーヒー粉の状態によって決定されていると言えます。

焙煎すればコーヒーが見えて来る

コーヒー豆に含まれる炭酸ガスは有機物(炭素を含むもの)が加熱される際に起こる、ごく自然な化学反応によって発生したものです。

まず焙煎過程でもコーヒー豆は体積が1.5~2倍ほどに膨らみます。そこで初期に発生する気体には生豆の持つ水分が水蒸気となって多く含まれていて、それが無数の目に見えない細胞壁(セルロース:炭水化物)を軟化させ押し広げます。水分は途中でほとんど蒸発しますが、そうして出来たたくさんの小さな部屋の中に生成されたガスや風味成分が溜まって行きます。

熱の与え方や時間によって内部で起こる化学反応が変化するので、焙煎方法や【焙煎度】の指標となる焼き上がり温度でもガスの量は変わってきます。

詳細には、豆の表面上の色味では同じ焙煎度かのように見えても、芯に近い内部がそれよりも浅いか深いかという「火の通り具合」も直接的に影響する要因です。

「膨らみの大きさ: 浅煎り⇒小さい 深煎り⇒大きい」

また、それらのガスには空気の侵入を防ぎ「酸化」や「吸湿」による風味の劣化を抑える効果があります。

ですがそれは時間の経過と共に徐々に抜けて行ってしまうこと。さらに、ドリップする(細胞壁の内側から成分を溶かし出す)ためにコーヒー豆を挽いて粉状にする工程によって、閉じ込められていたガスを一気に放出させてしまうことになります。

このため保管する場合は豆のままの方が風味が長持ちするということが言えます。

これらのことは生豆から抽出液にまで加工する工程を通じて、コーヒーから生まれて来る反応から分かることです。実際に焙煎してみたり焙煎直後の豆からドリップしてみたりすることはご家庭でも難しいことではないので、それが何よりの近道になると思います。

※関連記事:コーヒーの保管方法は? – 鮮度の基準と冷却について –

【鮮度】と【焙煎度】を表す目安

以上のことから粉が膨らまない原因の大半は、すでに鮮度が落ちて劣化した状態の粉を使っていることであり「ドリップする人の技術や経験は無関係」ということが言えます。

見た目にきれいな膨らみを作りたい場合は、細やかに注水をコントロール出来るタイプのドリップポットを使い、中心付近から少量づつ水を注ぐと良いでしょう。

ただし、良く膨らむ粉から品質について判断出来ることは以下のみです。

  • 劣化によって生まれる雑味や鈍い風味はないこと
  • 中~深煎りでコクや香ばしさが多めなこと

【生豆・焙煎・挽き目】という重要ポイントの品質や風味の細かい特徴、あるいは「お好みに合うかどうか」までを表しているわけではなく、あくまで良質なコーヒーに該当する最低条件の一つと捉えるのが適当かと思います。

極端な例を挙げると、どんなに安くて品質の低い生豆でも新鮮な粉なら膨らむこと。またかなりの浅煎り豆(ライトローストからそれ未満)用いた場合に見られる「新鮮なはずなのに膨らまない事例」も増えつつあります。

浅煎りについては、そもそもガス量が少ないことや粉の密度が高く吸水性が低いこと。そして、上記の膨らむポイントと逆の条件がいくつか重なることでそのような反応が起こることがありますが、この場合は膨らまないからといって良質ではないという結論にはなりません。

味覚だけに限らず、見た目の印象が人の感覚に大きな影響を与えるのも事実ですが、求める結果に対して良い方に働くこともあれば悪い方に働くこともあります。

いつでも新鮮な豆・粉を使ってもらうことで「コーヒードームが出来るなんてスゴい!」というイメージが逆転し「深煎りで膨らまないなんておかしい!」と感じる日がいつか来たとしても、それは確かなルートを前進している証ではないかと思います。

※関連記事:コーヒー豆・粉の選び方は?

粉から浮いてくる白い泡は何?

「白っぽい泡(エスプレッソではクレマ)」は水分と油分が交じり合って乳化した成分が、ガスを包み込むことで発生し浮き上がって来たものです。

焙煎豆には油脂分と界面活性作用がある物質も含まれていることから、このような現象が起こります。また糖・タンパク質などの抽出液の粘性を高める成分の複合的な作用が泡の発生に寄与するとも言われています。

泡が持つ浸透性や吸着性が抽出に及ぼす影響にも諸説ありますが、泡を舐めた時に苦みやざらつきを感じるのは吸着された一部の微粉による所が大きいと思います。吸着されていない微粉の方が量的には多く、抽出に与える影響は大きいです。

また、これに関連して油分の抽出についても諸説あり「油は水に溶けず比重が小さいので水面に浮く」「紙や布フィルター、粉に吸着されてしまう」といった説明がなされることがありますが、一部を見れば確かなようでも全てを説明している訳ではありません。

少なくとも、界面活性作用によって抽出液の中に溶け込んでいる油分もあり、分離して見えるものだけではないということが言えます。

以下はより詳細な検証が必要な話になりますが、泡を取り除くのと取り込むのとではどちらの方が良いのかという問題は、泡(厳密にはガスを覆う膜)を作る成分と量がどのようなものか、またその違いを生み出す焙煎度によっても風味への影響度は変わって来るのでケースバイケースの調整次第ということになると思います。

「膨らみ」は魅力的な諸刃の剣

鮮度と焙煎度によっても成分の量や粉の性質に違いが生まれ、それらが膨らみ具合として現れているということは、ドリップする際の抽出条件もそれに対応させる必要があるということを示しています。

生豆から抽出まで段階的に仕組みを理解して行くと自然なつながりの下に取るべき方針が見えて来るものですが、それに反して情報の一部を切り取り、ツギハギしている場合に陥りやすい事例に以下のようなものがあります。

  • 良く膨らむほどレアで高級な豆だから風味も良い
  • 膨らむこと自体が楽しいから出来るだけ大きくしたい

これらは「粉が新鮮だと膨らむ」という情報が過大評価されている事例です。その見た目のインパクトに強く引っ張られるあまり、ついつい膨らみの大きさを抽出の基準としてしまうということが起こりがちです。

そうなると実際に何が問題なのか?上記1~5のポイントを全て満たす状態の粉と水を使った透過式ドリップについて考えてみます。

  • 【鮮度:高 → 軽め】

※膨らみが大きいということは水の通り道が多いということなので流出速度が速くなります。結果として【時間:短 → 軽め】になります。

※極端に膨らみを大きくした上に注水量まで多くした場合などには、粉から水に成分が溶け出す時間が十分に得られず、他の【濃いめ】効果を打ち消してしまうほど強くなることさえあります。

  • 【焙煎度:深 → 濃いめ】
  • 【挽き目:細 → 濃いめ】
  • 【粉量:多 → 濃いめ】
  • 【温度:高 → 濃いめ】
  • 【時間:長 → 濃いめ】

※抽出レシピの例として【粉量15g:抽出量:150g】の場合としておきます。

抽出条件を並べてみると鮮度以外の全てが、粉の持つ成分をより多く取り出す「濃いめ方向」を示しています。これらを総合した場合の風味傾向は、ほぼ確実に濃度(収率)が高くコク・苦みも強めになると言えます。

では「膨らみが大きくなる=おいしいコーヒーになる」と言えるでしょうか?

コーヒーの風味には様々な特徴があり、お好みもそれぞれです。膨らみの大きさを「基準」にしてしまうとその傾向も大きく偏ってしまうという問題が起こりますので、上の疑問への答えはNOということになります。

鮮度を含めて粉の状態を知ることが大切なのは、抽出レシピ(4つの調整ポイント含む)について、どのくらいの値を選択するかを決めるための手掛かりになるからです。

お好みに近づけるためには、見た目やどれか1つの条件だけではなく全体のバランスを考慮する必要があります。その詳しい関係については以下の記事もご参照頂ければと思います。

関連記事:コーヒーミルの重要な仕事 – 挽き目・微粉・粒度分布

関連記事:上手にドリップするには? – 基本編【分量】【温度】【時間】と濃度の関係 –

関連記事:杯数に合わせた【粉量】の調整方法 -透過式編-(仮)

流出速度って何?

「透過式」において利用されている「透過現象」は、粉全体と個々の粒子についての「水の通り抜けやすさ」が直接的にドリップ調整の【時間】を変化させることから、最終的な風味にも影響して来ます。

流出速度は「水の通り抜けやすさ」の指標として当店が独自に用いている表現です。

基本ポイント【時間】は何によって決まるのか?という問題を明らかにして行くためにも必要となる指標なので、ご興味ある方は以下の関連記事もご参照下さい。

関連記事:上手にドリップするには? – 応用編【圧力】が「おいしい淹れ方」の鍵・まとめ –「注水の高さと量 – 【時間】を構成する要因」項

その先にあるエージング(熟成)

焙煎直後のガス保持量が多い状態の粉を用いてドリップする場合、水分が浸透しようとする圧力より内部のガス圧が高いことで成分が溶け出しにくくなるというコーヒー特有の問題が起こります。

これを防止する方法の一つは、ドリップ工程での「蒸らし」を念入りに行うことです。この工程の目的が水分で粉の繊維質(水に不溶)をほぐしつつガスを抜き、成分を溶け出しやすくするための準備だからです。

このような問題解決の延長に当たるのが、焙煎後からのガス量や成分変化に着目した「エージング(熟成)」と呼ばれる風味の調整方法です。

ほど良い期間を置くと味わいにまろやかさや深みが生まれると表現されることが多いですが、ガスが抜けて抽出時に水分が浸透しやすくなることと、焙煎の熱で固まった成分や繊維質が酸化や吸湿の作用でほぐれやすくなって来ることで成分が水に溶け出しやすくなることが原因の一つと考えられます。

特に浅煎り(ライトロースト)系の豆は焙煎後にも、深煎りに比べて繊維質が固く閉まったまま残っている状態なので、自ずとエージングの期間を長めに取る場合が増えるようです。

焙煎から数日~1週間くらいとすることが一般的ですが、風味評価についてはお好みや抽出方法にもよりますし、今の所はその日数で優劣を付けるといった客観的な基準はありません。

コーヒーはエージングすると美味しくなるの?

一般的に食品の熟成とは、何らかの酵素を利用してタンパク質、脂質、糖質を分解することを指します。ですが、コーヒー焙煎豆においては具体的にどのような化学変化を指して用いられているかは不明で、慣用的な表現として使われているものと思います。

コーヒーらしい風味は、焙煎の熱によって生豆中の成分が化学反応することで生まれます。主にメイラード反応と呼ばれる糖類とアミノ酸やタンパク質が複雑な化合物(腐食酸・褐色物質)を生成するものですが、この反応は常温下でもゆっくりと進行するそうです。

なので、そのような常温下でも起こる反応として酸化や水和、加水分解以外にも焙煎豆中の成分自体を変質させる要因がいくつか存在していることは明らかです。

また上記▢の界面活性物質のように、焙煎中に生成される物質の中には酵素も存在し、それが焙煎後に働いているという可能性も否定出来ません。

しかし、熟成は腐敗と同じ反応でもあることから、風味にとって有益な変化だけしか起こさないと考えるのは不自然です。

まとめとして実際の例を挙げると、繊細な風味を競う競技会などの場面で使われることのある「豆・粉を密封して冷凍保管しておく」という手法があります。

それは焙煎後の化学変化や香気成分の揮発を抑えつつ炭酸ガスを抜くことで、成分を劣化させずに抽出効率を上げるためのエージング方法と説明することが出来ます。

※同時に、硬くすることで挽いた時の粒度分布を均一に近づける効果もあります

また、そのような場面ではよく「風味のピーク(最大限)」という表現を耳にします。

こちらも経験則に基づいており根拠と呼べるような説明は見当たらない事例ですが、可能性としては以下のことが関係していると考えられます。

  • 焙煎後にも風味にとって有益な反応が低温長時間という条件において選択的に促される
  • 油分が繊維の奥から滲み出て来る際に香気成分が溶け込んでいく

※芳香族に当たる香気成分は親油性が高い

しかし、コーヒー豆内部でそのような反応が実際に起こっているかどうかは化学的な検証が必要だと思います。

※乾燥状態の生豆を数年単位で保管しておいたものを「熟成コーヒー」と呼ぶ商品がありますが、焙煎後のそれとは別のものです。

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